世界経済を読み解くためのキーワードとして、「為替」「物価(デフレとインフレ)」「金利」「株価」「GDP」「BRICs」「商品(コモディティ)」の7つを挙げてそれぞれ説明をします。この7つのキーワードは「基本情報」として押さえておいてください。そのあとは自分の興味に沿って情報を分別し、情報を増やしていっていただければと思います。

(本記事は、菅下清廣氏の著書『10年後に差が出る! 富を作るために「お金」と「経済」を学びなさい』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています)

金利とは何? どのように決まるのか?

お金持ち,富裕層
(写真=PIXTA)

一言で「金利」と言いますが、金利には「預金金利」「政策金利(短期金利)」「長期金利」など、さまざまあります。そもそも「金利」とは、いったい何なのでしょうか?

「金利」は簡単に言ってしまえば、「お金を貸し借りする時に払う値段(価格)」です。お金にも価格があり、需要によってその価格が変動する。借りたい人が多ければ価格(金利)は上昇する。借りたい人が少なければ価格(金利)が下落する。金利をお金の値段(価格)と考えればわかりやすいですね。

では、金利はいったいどのように決まるのでしょうか? モノの値段は「需給関係」で決まります。これは「お金の貸し借り」も同じことで、前述したように、借りたい人が多いほどお金の価値はあがります。つまり、金利が上昇します。

例えば、景気が良ければ、「高い金利を支払ってでも、お金を借りたい」という人が増えるでしょう。結果、金利は上がるのです。

逆に借りたい人が少なければ少ないほど、お金は価値が低くなり。金利も下がります。「金利が低くても、お金を借りたくない」となってしまうのです。

実は、現在の日本は後者になります。「お金を借りたい」という人が少なく、金利が限りなくゼロに近い状態になってしまっているのです。なぜ、こうなってしまうのでしょうか? その原因は「デフレ」です。デフレの経済下では、モノの価値が下がってしまいますから、お金を借りてまで投資する対象がないのです。

ですから、デフレが終わる時のサインとしては、いずれ間違いなく金利が上がってきます。なぜなら、「お金の需要」を最も反映しているのは「金利」だからです。

日銀は「政策金利(短期金利)」と「公開市場操作」によって金利をコントロール

その金利がどのように決まっていくのか。金利をコントロールする立場にある中央銀行(日銀)の役割を中心に解説していきましょう。日銀は主に「政策金利(短期金利)」と「公開市場操作」によって、金利をコントロールしています。

1994年9月まで、日銀は「公定歩合」を操作することによって、景気をコントロールしていました。「公定歩合」とは何か? これは、「日銀が一般の銀行にお金を貸し出す時の金利」のことです。

1994年9月まで、一般の銀行の金利は、国によって規制されていました。日銀の公定歩合の上げ下げによって、一般の銀行も、金利を上げ下げしなければならなかったのです。ところが1994年10月から、基本的なルールが変わり、銀行は自由に金利を決めることができるようになりました。つまり、公定歩合の操作は、あまり意味をなさなくなったのです。

実はこの頃、すでに一般の銀行は、日銀からあまりお金をかりなくなっていました。では、一般の銀行は、いったいどこでお金を調達していたのでしょうか? それは「短期金融市場」(1年未満の期間で金融取引が行われる市場)です。銀行は短期金融市場で、「金融機関同士」でお金を貸し借りすることによって、お金を調達していたのです。

通常、短期金融市場の金利とは、「無担保コール翌日物金利」のことを指します。「無担保コール翌日物金利」は、短期金融市場における「借りたお金を翌日返す時の金利」で、「オーバーナイト物金利」とも呼ばれています。

日銀は、公定歩合ではなく、この短期金融市場に介入することによって、「政策金利(短期金利)」をコントロールするようになったのです。

長期金利はその国の実体経済を表している

それでは「長期金利」とはいったい何でしょうか? 「長期金利」の指標となっているのは、「10年物の長期国債の利回り」ですが、これはなぜでしょうか?

国はお金が足りなければ「国債」を発行して資金を調達します。「国債」は国が発行する株券のこと。国は国債を買ってくれた人に「利子(利回り)」をつけてお金を返すのです。日本が発行する国債は「10年物の長期国債」が大半を占めています。ですから「10年物の長期国債の利回り」が「長期金利」の指標になるのです。

国債と金利には密接な関係があって、金利が上がれば、国債の値段は下がるようになっています。

あなたは「政策金利(短期金利)」と「長期金利」、いったいどちらに注目するべきなのでしょうか?

応えは「長期金利」です。なぜなら、「政策金利(短期金利)」は、各国の中央銀行が政策的に決めている金利だからです。政策的に決めているということは、「政策金利(短期金利)」は必ずしもその国の実体経済を反映していません。一方10年物の国債利回り、つまり「長期金利」は「需要」と「供給」の関係で決まっています。

つまり「長期金利」こそが、その国の実体経済を表しているのです。

株価も需要と供給の関係で決まる

さて、4つ目のキーワードは「株価」です。

まずは、「なぜ株価が上昇したり下落したりするのか」という話ですが、為替や金利と同様、株価も「需要と供給」の関係で決まります。買い手(=需要)が多ければ、株価は上がりますし。買い手が少なければ、逆に株価は下がります。

では、そのことを踏まえたうえで、なぜ日本の株価が低迷しているのか、ということについて考えてみましょう。

その理由は「デフレ」です。モノが売れないと、会社は潰れてしまいます。また、デフレが続けば、会社の利益はどんどん薄くなります。デフレ下では、会社の業績はなかなか良くならないのです。

株価は長期的に見ると「企業の業績」を反映します。しかし短期的に影響を与えるのは「市場の心理」です。つまり、多くの人が「今後、株価が上がる」と思うか、それとも「下がる」と思うかが、短期的には株価に影響を与えるのです。

では、いったいどんな情報を見たら、多くの人は「株価が上がる」と思うのでしょうか? それは「脱デフレのサイン」です。日本がいよいよデフレを脱する、そうしたサインが出れば、日本の株価はどんどんあがることでしょう。

日本経済は日経平均株価指数でわかる

世界各国の株価には、それぞれ代表的な指数がありますが、日本の代表的な株価指数は「日経平均株価」です。日経平均株価というのは、東京証券取引所第一部上場企業の中から、代表的な企業225社を選び出し、株価の平均値を表したものです。

この225社は、例えばトヨタ、ソニー、任天堂、NTTなど、日本を代表する大手企業ばかりです。実は、日本の株式会社400万社は、この225社とビジネス上で何らかの関わりを持っている場合が多い。だから、この225社の動向を見れば、日本経済全体の動きがわかるのです。

菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。マーケット情報配信サービス「 スガシタボイス 」、株価の解説・予測が無料で読める「 スガシタレポート オンライン 」を配信中。

【10年後に差が出る富の作り方シリーズ】
(1)遅くとも30代までに知っておきたい「お金持ち」への道
(2)10年後に差が出る富の作り方 知っておきたい「経済の基本」
(3)なぜ、株価は上昇したり下落したりするのか?
(4)日本はなぜ、ここ20年「ほとんど成長していない」のか?
(5)30代までに知っておきたい「年収1億円」を達成する投資勉強術