アラブ首長国連邦(UAE)最大の銀行、エミレーツ NBDが、年内にブロックチェーン小切手を導入する予定であることを発表した。
小切手に印刷されたQRコードで読み取った記録を、銀行のブロックチェーン・システムで管理するという仕組みだ。必要に応じて、取引の全プロセスを半永久的に保管・チェックすることが可能になる。
ブロックチェーン技術で小切手決済の透明化を向上
日常的に利用する機会が極端に減った小切手だが、ビジネスの場ではまだまだデジタル決済をしのぐ根強い人気を誇る。昨年発表された「AFP電子決済サーベイ」 では、金融幹部の4割がB2B決済に小切手を利用しているほか、9割が会計システムで手形管理を行っていることなどがわかっている。
しかし小切手の難点として、帳簿管理の複雑さや換金のリスクが挙げられる。「受取手形と支払手形を別々に期日まで管理する必要がある」「不渡りだった」など、トラブルが起きた際も含めて一方通行な取引になりがちだ。
NBDの次世代小切手が実用化されることにより、こうしたデメリットが一挙に解決されることになる。ブロックチェーン技術で取引の一部始終を記録し、そのデータにあらゆる関係者がアクセスできるため、決済の透明度が著しく向上する。
QRコード、磁気インク文字認識技術で安全性と同時に効率アップ
気になるセキュリティー面に関しても、QRコードをとおして認証を行いデータを記録するため、金融犯罪の防止にもつながる。また磁気インク文字認識(MICR)技術も採用し、プロセスの効率化を図る構えだ。
ブロックチェーン小切手の開発は日本でも三菱東京UFJ銀行と日立 が共同で着手しており、シンガポールでの実験が進められているが、NBDのブロックチェーン化に対する意気込みは目を見張るものがある。
NBDは昨年10月にも、世界初のブロックチェーン型即時国際送金取引の実験を成功させた。次世代小切手に関してはトライアル段階ではあるものの、アブドーラ・カッセムCEOは「国内の銀行で初めて、最先端の技術を内部プロセスに採用することに成功した」と満足気だ。
世界屈指のテクノロジー都市へと変ぼうを遂げるドバイ
こうした積極的な取り組みは、「世界屈指のテクノロジー都市へと変貌を遂げる」という野望に燃える、ドバイ一大プロジェクトの一環である。
石油依存国からの脱出を図るドバイは、「グローバル・ブロックチェーン・カウンシル(GBC)」の設立などをとおし、ドバイ全域をブロックチェーン技術でスマート化する試みの真っ最中だ。
政府公文書の管理から3Dプリントの傑作である次世代オフィスまで、他国の技術発展をよせつけない勢いで歴史を塗り替え始めている。
最大手NBDの動きが活性剤となって、今後UAE全域の金融機関がブロックチェーン化に乗りだすことも期待できる。ドバイ、そしてUAEの未来の姿が、ありありと目に浮かんでくる。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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