経済産業省が昨年7月から議論してきたFinTech(フィンテック)の方向性に関する検討会の報告書「FinTechビジョン」を公表した。

IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)などの技術を使って革新的な金融サービスは、米国が数年先を行っている。経産省は2015年から研究会を開き、その結果に基づいて昨年、FinTech検討会議を発足した。報告書は金融庁、日銀、企業経営者、研究機関、学会、経済団体の創意をくみ取ったビジョン(提言)である。

FinTechとは?から課題と対応まで総括

経産省,FinTech
(写真=PIXTA)

FinTechビジョンは、3章で構成されている。第1章「何が起きているか」は、FinTechが何を変え、どのような技術が使われ、金融をどのように変えるかを説明。第2章の「目指すべきFinTech社会の姿」は、経済、社会にもたらす劇的変化、家計や企業の変化を説く。そして第3章「目指すべきFinTech社会を実現する課題と政策」は、FinTech社会実現の道筋や「お金」の流れをデジタルで完結する方法など、さまざまな課題と対応を扱っている。

検討の結果分かったことは、まず経済活動の担い手「お金」の形態と流れが変わり(キャッシュレスのクレジットカードや電子マネー)、信用、リスクのとらえ方や担い手も変わるということ。つまり第四次産業革命やSociety5.0で象徴される経済活動の変化が生まれるとしている。その原動力は、ユーザー基点のイノベーションであり、それを担う起業家精神を持つ人々だ。

「お金」を変える力は、スマホ初めビッグデータを処理・分析する技術やIoTセンサー、ネットワーク制御技術である。ブロックチェーン技術や認証技術、APIの進歩で仮想通貨(ビットコインなど)の取引に変わる。

金融のあり方を大きく変える

FinTechはこうして、今ある金融のあり方を変える。個人や企業の経済活動に伴う送金や支払いが、電子化・モバイル化で大きく様変わりする。FinTechを見据えたベンチャー企業が飛躍的に成長して、新しい金融プラットフォームを提供する可能性が大きくなる。

決済手段の多様化によって、個人生活は劇的に変化する。企業の収益力も劇的に上がる。資金調達力やキャッシュ・マネジメントが強化され、生産性が上がる。

FinTech社会実現の道筋として、(1)キャッシュレス社会の実現(2)すべての取引のデジタル化(3)そのための企業の経営力・生産性改革(4)FinTechイノベーションを生み出す環境づくり――を掲げているFinTechビジョンは、最後にグローバル競争力の拠点作りを提言。そこでは「国際金融都市・東京」の実現を視野に入れている。

また別添資料「FinTechな生活(平日編)」では、1日の生活がどう変わるかが分かりやすく解説されている。文章とはいえ具体的にその姿をイメージできる内容だ。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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