ビットコイン投資で知られるビリオネア・ベンチャー・キャピタリストのティム・ドレイパー氏が、ビットコイン以来初めて、新たな仮想通貨投資に乗りだす意向を明らかにした。
ドレイパー氏の真の狙いは、仮想通貨の新星の発掘そのものよりも、ブロックチェーン・プラットフォーム「Tezos」をとおしてICO(新規仮想通貨公開)に参加することで、「広範囲な投資家層に仮想通貨が安全であることを示す」ところにあるようだ。
ビットコインが高値でも、多くの投資家が仮想通貨に躊躇
企業が大型の資金を調達する手段として定着しているIPO(新規株式公開)。その仮想通貨版であるICO では、新たに発行する仮想通貨のトークンを投資家に販売することで、運営資金を稼ぎ出す。
投資対象が仮想通貨で、仮想通貨取引所が証券会社の役割を果たすという点以外、投資の仕組みや概念は一般的なIPOと大差ない。投資家は将来価値があがると期待できる新種の仮想通貨に資金を投じ、発行側は調達した資金でさらなる開発や促進活動に励む。
ICOを利用した資金調達では、2014年にイーサの前売りで1800万ドル(約20億3346万円)相当を調達したイーサリアムが、最も成功した一例だろう。
しかしIPOのように規制が確立されていないICOを、リスクの高い投資と見なす専門家も多い。仮想通貨の知名度がビットコインの高値に押しあげられているものの、一般の株式と同じ水準には達していない現状だ。
ドレイパー氏「ビットコインが仮想通貨の最高峰」
ベンチャー・キャピタル企業、ドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソンを1985年に設立したドレイパー氏は、Skypeや中国最大の検索エンジン「バイドゥ(百度)」などにも初期投資する一方で、いち早くビットコインの飛躍を読みとっていた。
2014年に3万枚のビットコインを購入したのを皮切りに (推定価格1900万ドル/約21億4776万円)、その後も価格の浮き沈みに左右されることなく、精力的にビットコイン投資を継続。
その間様々な仮想通貨が投資家の注目を集めたものの、ドレイパー氏は「ビットコイン一筋」を崩さず、イーサリアムを含むほかの仮想通貨に秘められた潜在性を肯定する一方で、「ビットコインをしのぐコインはない」 と断言していた。
ウォール街の頭脳集団や計算機科学者が立ち上げた「Tezos」
そんなドレイパー氏が関心を示し、世間を驚かせたのが「Tezos」 への参加だ。このクラウドファンディング・プラットフォームは「デジタル・コミュニティー」というコンセプトのもと、ウォール・ストリートの頭脳集団と計算機科学者や数学者、物理学者などにより、2014年に立ち上げられた。
ビットコインを含む既存のブロックチェーン・プラットフォームと似ているが、管理を分散化させている点が大きく異なる。
既存のブロックチェーンは一部の参加者に権限が集中しやすい傾向が指摘されているが、Tezosではブロックチェーンのガバナンスを分散化させることで、こうした問題点の改善を試みている。
仮想通貨投資の安全性や有益性を幅広くアピール
ドレイパー氏はTezosをとおした仮想通貨投資について、規制が標準化していないICOに不安をいだく投資家に、「仮想通貨やICOが安全で有益なものであることを、自らを手本に示すことが目的」だという。
金融市場が大きな転機をむかえていると確信しているドレイパー氏は、今後より多くの投資家がICOのような新たな投資商品に目を向けて行くことが重要だと主張。次世代投資産業の幕開けを先導して行く意気込みを見せている。
ドレイパー氏のような著名投資家を顧客にむかえることで、Tezosの信頼度が一気にあがることも大いに期待できる。Tezosの大まかな情報はウェブサイト( https://www.tezos.com/ )から観覧可能。本格的な始動は5月下旬を予定している。仮想通貨の新星を探している投資家は要チェックだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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