流行語大賞にも選ばれた「爆買い」。主に中国からの訪日客の購買行動を指す言葉で、日用品や電化製品などを山のように購入する様子から名付けられましたが、この爆買いにも変化が生まれているようです。

「爆買い」する訪日中国人が減っている?

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(写真=YP_photographer/Shutterstock.com)

日本を訪れる外国人は年々増えてきています。日本政府観光局(JNTO)によると、2017年3月の訪日外国人客数は前年同月比9.8%増の220万5,700人(2017年4月19日公表、2017年3月推計値)を記録したそうです。
そのうちの約51万人(全体の約23%)が中国からの訪日客で、観光庁の調査によれば、彼らの日本での旅行消費額は2016年で1兆4,754億円(全体の約40%)と、日本にとって最大のお得意様といえるでしょう。

ニュースなどでよく見かけた中国からの観光客がたくさんの商品を買い求める姿ですが、実はこの「爆買い」が減っています。

爆買いブームは2015年上半期

新聞各紙では訪日外国人の消費行動に変化が表れていることを報じています。同じく観光庁の調査によれば、2015年の訪日中国人の一人あたりの買い物代は16万9,260円でしたが、2016年には12万5,670円と約4万円も減っています。

さらに、細かく四半期ごとに訪日中国人の一人あたりの買い物代の推移を見てみると、2015年1~3月期に18万4,364円、同年4~6月期に18万6,366円となって以来減少しており、2016年10~12月期は12万8,303円まで下がっています。消費がこのように減少した理由にはさまざまな要因が考えられます。

まず要因としてあげられるのは対人民元/円為替レートの変化でしょう。2016年11月初旬の米国大統領選挙後は再び円安トレンドになってきてはいますが、「爆買い」ブームだった2015年上半期に約19~20円/元だった人民元のレートは、それ以降下落傾向にあり、2017年3月末時点では約16円/元と「元安」となっています。

また別の要因として、中国政府が2016年4月に、海外で購入したものを持ち込む際の「関税」を引き上げたことも影響しています。関税の引き上げにより、商品や金額にもよりますが、日本で購入して持ち帰ったとしても、以前ほど安く購入することができなくなりました。

こうした要因が重なり、訪日中国人の消費行動に変化が現れてきたようです。その結果、訪日外国人の中でも特に中国人は商品を大量買いする消費から、観光や高付加価値のサービス消費へとシフトし始めたといわれています。

訪日中国人が買い物以外の何で消費しているのか

訪日中国人の消費行動は「モノ」から「コト」へと変化し始めています。それではどのような「コト」に対しての消費を強めているのでしょうか。

最近の報道では訪日外国人が、身に着けたり消費したりする「モノ」ではなく、食事や観光といった「体験・経験・サービス」を求めるようになってきているようです。美容やエステが目的の旅行や、高級な食事を楽しむグルメツアー、さらには芸者や墨絵といった日本独自の文化を体験するツアーも人気のようです。

また、訪日外国人の宿泊方法についてAirbnb(エアビーアンドビー)のような「民泊」はすでに話題となっていますが、観光についてもHuber.(ハバー)の「TOMODACHI GUIDE」ようなソーシャル・ガイド・マッチングサービスが観光案内の新しい形として始まっていることは、今後の訪日外国人の「旅行の形」に少なからず影響を与えるのかもしれません。

今後の訪日外国人への「おもてなし」

日本政府は2020年に訪日外国人の消費額を8兆円まで引き上げようと目標を立てています。爆買いのブームが下火になってきたとはいえ、訪日外国人は依然増加傾向にあり、今後もさらに増加することが予測されています。多くの人が日本を訪れるのには理由があって、そこにどのようなニーズが存在するのかを理解し把握することが大切なのではないでしょうか。

そのうえで、日本に訪れたいと思える商品やサービスを提供すること、宿泊施設を作ったり外国語案内を充実させたりといった、訪日外国人が快適に滞在できる環境をつくることが、今後の大きな課題といえそうです。(提供: お金のキャンパス

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