無担保で高額のお金を融資する銀行カードローンをめぐって、全国銀行協会(会長小山田隆・三菱東京UFJ銀行頭取)が、各行の過剰融資防止策を調査していると発表した。消費者金融より規制がゆるく、貸付額が急増して多重債務になる懸念が高まっているため。一部に貸付額上限を引き下げる動きはあるが、業界は消費者金融並みの法規制の強化には否定的見解である。

全銀協は各銀行にアンケート調査して、過剰融資を防ぐ取り組みを5月中にまとめて、必要な対策を検討する。小山田会長は「カードローン業務をしっかり見直す必要がある」と述べている。

過剰融資の可能性に厳しい目

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(写真=PIXTA)

消費者金融の貸付額は「年収の3分の1以下」という「総量規制」がある。銀行にはそれがなく、貸付額が急増しているのが現状だ。日本銀行が同日公表した統計では、2016年度末の残高は、前年度比9.4%増の5兆6024億円だった。

日本弁護士連合会は銀行にも規制を求めている。こうした声を受け、全銀協は3月、加盟銀行に過剰融資の防止策を講じるよう求めた。さらに業界自体も必要な対策を練る作業を始める用意がある。

銀行カードローンへの視線は厳しい。一部の銀行はすでに過剰融資の抑制に動き始めている。三菱東京UFJ銀行はテレビCMの本数を減らし、収入証明書なしで貸す上限を200万円から50万円に下げた。三井住友銀やみずほ銀も融資審査の厳格化や広告表現の見直しを進めている。地方銀行の福岡、横浜、常陽などは今後、50万円超を貸す時には収入証明書を提出させる方針。楽天銀行はWebサイトから「総量規制対象外」の文言を削除した。じぶん銀行は外部サイトに表示される広告を見直す(朝日新聞デジタルによる)。

NSAのネット情報監視ソフトを盗用

小山田頭取は今年4月1日、全銀協会長に就任後共同通信と会見して、「適正な貸し出し水準や条件を各行が主体的に見極めなければならない」と述べたが、規制当局などによる一律の規制には否定的見解を示した。同会長は「健全な消費者信用市場を育成するのは大事な使命だ。短期的に伸ばせばいいとなると自己破産などが起きて市場が傷ついていく」と語った。

大手・中堅銀行の現行の貸付限度額は、三菱東京UFJ銀行が500万円、三井住友銀行が800万円、みずほ銀行1000万円、横浜銀行1000万円、北海道銀行800万円、新生銀行500万円など。これを見ると確かに、上限貸付額が高額すぎるようでもある。

全銀協は対策として、貸し付けの審査時に各行が年収証明書などで収入を把握し、他行やノンバンクからの貸付額も考慮して融資することを促した。また、カードローンの広告で、貸付額に規制があるノンバンクとの違いを強調して、借り入れをあおらないようさまざまな対策を求めている。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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