7月22日に米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズが発表した第2四半期の業績を見ると、売上高は前年同期比5.7%増の315億ドルとなりました。アナリスト平均予想は311億ドルでしたのでそれを上回る売上げを記録しました。また、純利益は43億ドルとなっており、前年同期の52億ドル比では16.8%減となりました。ただ、特別項目を除く1株利益は90セントと、アナリスト平均予想の90セントを上回りました。契約者数は140万人の純増となり、純増幅は53%拡大となりました。
ただ、同社を取り巻く環境は厳しいといえます。業界第4位であるTモバイルの低通信料金によって競合であるAT&Tが通信料金の引き下げを行い、価格優位性を奪われており、それ故に同社の低価格フィーチャーフォン加入者がスマートフォンへの買い替えを行う際、TモバイルやAT&Tの低料金エントリープランに転出してしまったことなどの影響もみられます。つまり、現在アメリカでは業界第4位であるTモバイルが低料金プランを武器に一気にシェアを拡大しており、2強と呼ばれるベライゾンとAT&Tでさえも価格競争に巻き込まれているのです。
携帯電話業界の構造を変えるかもしれない価格競争
Tモバイルから端を発した低価格競争により、AT&T、そしてベライゾン社も低価格プランに対応せざるをえませんでした。ベライゾン社によると第1四半期の純増数はスローダウンしているものの、2014年1月にデータ共有250MBプランを追加を行ったり、2014年3月よりシングルラインプランを導入し、転出の状況は改善されていると言います。
さて、日本の通信キャリアを振り返ってみると、容易に他社への転出がしづらい仕組みであったことが分かると思います。かつて、携帯の端末を購入する際はたいていが2年縛りとなっており、もしも途中で解約を行うと残りの端末代の他、解約金までも支払う必要があります。しかし、現状の日本の通信キャリアを見ると以前に比べて他社へと転出し易い状況になっています。各社がMNPを推進するために端末の価格を実質0円するキャンペーンを行ったりと、他社からの転入顧客を獲得するために莫大な費用を捻出しているからです。
これが何を意味するのかを突き詰めると、端末、通信速度等の機能の面での差異がなくなった結果、価格や金銭インセンティブでの競争に入ったということです。以前はアイフォン(iPhone)が購入出来るのはソフトバンクのみでした。そして、最も通信速度が安定していたのはドコモでした。しかし、今ではアイフォンは3つのキャリアで購入することが出来ますし、通信速度についてもソフトバンクが莫大な投資をして通信基地を広げたおかげで、3社ともそう変わりません。つまり、端末や通信速度の差異がなくなったことにより、各社とも巨額の費用を充てて他社からの転入顧客を獲得せざるをえなくなってしまったのです。そして、アメリカの通信会社でもほぼ同様のことが起こった結果、こちらでは価格の引き下げ競争という現象が起こったのです。(通常であれば価格の引き下げ競争に入るのが普通ですが、日本の通信キャリアが定額プランの料金を3社で合わせているのに、一抹の何かを感じ得ません。)