トヨタと米マサチューセッツ工科大学(MIT)がブロックチェーン技術を自動運転車両開発に利用する共同プロジェクトを開始する。AIの研究開発を進めているトヨタの米法人トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)とMITメディア・ラボが発表した。

安全な自動運転車両を開発するため、運転に関するビッグデータを分散型コンピューターネットワークであるブロックチェーンで蓄積、共有、利用する可能性を研究・開発する。

ブロックチェーンは皆で監視し合う分散型システム

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(写真=Bhakpong/Shutterstock.com)

TRIのモビリティ・サービス・ディレクター兼最高財務責任者(CFO)であるクリス・バリンジャー氏は「ブロックチェーンは、自動車オーナーや運輸会社の管理職、メーカーなどから得られるデータを蓄積し、自動運転車実現という目標達成までの時間を早めてくれる可能性がある」と提携目的を語った(ロイターによる)。

ブロックチェーンとは、世界中に点在するコンピューターにデータを分散することで、中央集権を置かずに破壊・改ざんが困難なネットワークを作る技術である。相互に信頼関係のない不特定多数の参加者間で、権利の移転を実現することに適している。ビットコインなど暗号通貨の基盤技術である分散型台帳としてすでに利用されている技術である。

トヨタは、シリコンバレーに昨年1月設立したTRIを技術イノベーションの拠点と位置づけ、人工知能技術に関する研究・開発を加速させるため、今後5年間に10億ドルを投入する。今回の共同研究はMITのほか、ドイツ、イスラエルなどの企業も参加するという。

TRIのギル・プラットCEOは、「TRIでは、事故を起こさないクルマ、誰もが移動の享受できるモビリティ、高齢者の尊厳ある老後をサポートするロボットなど、人と協調できる人工知能技術の開発に取り組む」と意気込みを述べる。

国際色豊かな研究開発チーム

協業するMITメディア・ラボのネーハ・ナルーラ・デジタル通貨イニシアチブ部長は「ユーザーがその運転データを管理できるオープンプラットフォームを作成するため、ブロックチェーン技術の利用で先陣を切るトヨタに興奮している」と語った。

ドイツのBigchainDBがトヨタ向け分散型台帳づくりを支援、米Oaken InnovationsとイスラエルのCommuterzはP2Pカーシェアリング、車両アクセ、決済、P2Pカープーリングなどのブロックチェーン・アプリづくりでTRIに協力する。

TRIはまた、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)とAI利用の自動運転車開発で協業すると発表している。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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