ワンセグ機能付き携帯電話の所有者は、NHK受信料を支払う義務があるかどうか、裁判所の判断が真っ二つに割れている。

水戸地裁は5月25日、「支払い義務あり」との判決を下したが、昨年8月のさいたま地裁判決は「支払い義務なし」だった。判断はいずれも高裁レベルで争われる見通しだ。

ワンセグ受信可能な携帯は受信設備の「設置」に当たる?

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(写真=GSerban/Shutterstock.com)

裁判の焦点は、「受信設備を設置した者」に支払い義務があると規定した放送法64条1項の解釈である。水戸地裁(河田泰常裁判長)は、放送法にある「設置」は「受信設備を使用できる状態におくことをいい、『携帯』の概念も包含する」と判断した。

一方、さいたま地裁(大野和明裁判長)の判決は、「設置」に「携帯」の意味を含めることに無理があるとして、支払い義務が生じる設置者として認めなかった。

今回裁判を起こしたのは、茨城県高萩市在住の50歳男性。男性はテレビを所有していなかったが、昨年7月にNHKの勧誘員がワンセグ機能付き携帯電話を所持していることを理由に契約を結ばされた。男性は機種変更して契約を解除したが、対応が納得できずに受信料の1カ月分1310円の返還を求めて提訴していた。

さいたま地裁の原告は確信を持って支払い拒否

ワンセグとは携帯端末向け地上デジタル放送の名称である。地デジは世界的に割り当てられた電波の帯域を13区分(セグメント)に分割、割り当てて情報を送っているが、そのうち1区分を使うことから「ワンセグ」と呼ばれる。移動中でも携帯電話で途切れず見ることが可能で、消費電力も小さくて済む。

さいたま地裁の原告は、埼玉県朝霞市の大橋昌信市議。同市議は携帯電話しか持たず、受信契約義務があるかどうかNHKに確認したところ、「義務がある」と言われた。同市議は、聴取料の支払い義務に反対する支持団体「NHKから国民を守る党」の現職議員で、NHKを相手取り義務のないことの確認を求めて提訴した。

原告の大橋議員は、「電話を『携帯』しているだけでは設備を『設置』したとはいえない」と主張。NHKは「設備が一定の場所に置かれているか否かで区別すべきでない」として、契約締結義務があると反論した。 この訴訟は判決後NHK側が高裁に控訴している。

さいたま地裁の原告は確信を持って支払い拒否

訴訟の争点はまとめると、放送法にはワンセグ携帯が受信契約の対象になるとの明確な規定がないので、64条1項をどのように解釈するかにかかっている。ワンセグ携帯しか所有していなくてもNHKと契約しなければならないという判例は、これまではなかった。今回の水戸地裁の判断は、その判例を覆す全く逆の判断となる。

5月25日の判決後、原告の男性は「判決は不当だと感じている。ただちに控訴したい」と語った。一方NHKは「妥当な判決と受け止めている」とコメントしている。この争いは尾を引きそうだ。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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