「年金大国8カ国(日本含む)の退職貯蓄の不足額が、2050年までには400兆ドル(約4京4524兆円)を上回る」 との見解を、世界経済フォーラム(WEF)が示した。京は1兆の1万倍、10の16乗というとてつもない数字だ 。

世界一の高齢化大国、日本の2015年の不足総額は11兆ドル(厚生年金不足額6兆7000億ドル、事業者退職年金不足額2000億ドル、個人貯蓄不足額4兆1000億ドル)。2050年には25兆7000億ドル(約2860兆6670億円)に達すると予想されている 。

対象8カ国の不足額は67兆ドル

この調査はWEFが大規模な年金制度が確立された8カ国(日・米・英・豪・中・カナダ・オランダ・インド)における、高齢化社会経済の未来を、各国の「厚生年金(強制加入によるもの)」「事業者退職年金」「個人貯蓄」に基づいて予測したものだ。

対象8カ国の不足額は2015年の時点で、総額66兆9000億ドル(厚生年金不足額50兆5000億ドル、事業者退職年金不足額9000億ドル、個人貯蓄不足額15兆6000億ドル)に達している。
今後40年にわたり、不足額が年間5%の速度で膨張するしていく可能性が指摘されており、「至急解決策がとられない限り、2050年には427兆8000億ドル(約4京7618兆円)という天文学的数字に達する」と警鐘を鳴らしている。

2050年には米、中が二大老後資金不足大国に?

日本は米国に次ぐ老後資金不足大国だが、両国が大きく異なる点は厚生年金と個人貯蓄の比重だ。両国の2015年の個人貯蓄不足額は、8カ国中最も高い4兆1000億ドル。

米国の厚生年金不足額が日本のおよそ4倍(23兆2000億ドル)に達している点で、大きく差が開く。2050年には米国の不足総額が136兆8000億ドル(約1京5227兆円)と、日本の5倍にまで膨らむ。

日米に次いで老後資金不足が懸念されるのは中国だ。2015年の不足総額、10兆7000億ドルが、2050年には119兆ドル(約1京3245兆円)に手が届きそうだ。

OECD推奨の「適切な老後の収入」は現役時代の収入の70 %

年金を含む老後貯蓄問題の背景に、高齢化と平均寿命の延伸があることは言うまでもない。WEFの見解では、今日生まれた子供の平均余命は100歳を超える。

例えば日本の年金受給開始年齢は65歳。保険料全額納付期間は40年と定められているが、65歳で退職した場合、働いたのとほぼ同じだけの年月を年金受給者として過ごすことになる。

各国で深刻化する老後資金不足問題は、それだけの蓄えを国や個人がつくれていないからだ。OECD (経済協力開発機構) などの専門家が推奨する「適切な老後の収入」は、現役時代の収入の70%。それより低くなった場合、生活水準を著しく落とすことになる。

しかし特に低所得層では老後の貯蓄どころか、日々の生活すらままならない現状が目立つ。所得格差の改善は、政府が取り組むべき最優先事項の一つであるべきだ。

国民の老後に対する意識改善も重要

老後資金不足問題が、政府の取り組みだけでは到底解決できないレベルに達した一因として、受給側の知識・準備の欠落も指摘されている。

英国を一例に挙げると、保険料全額納付期間は35年間と日本より短めだが、受給開始年齢の引きあげはすでに2010年から実施されており、2018年4月以降は68歳に 改正される。しかしオランダの大手保険会社、エイゴンが4000人の労働者を対象に昨年実施した調査からは、57%が「保険料全額納付期間を正確に把握していない」実態が明らかになっている。
現在の最低納付期間が10年間であるため、「10年分払っておけば全額貰える」と勘違いしている国民も少なくない。

また73%が「住宅ローンも払い終えているだろうし、全額受給出来れば老後は安泰」など、国民年金の役割があくまで老後の生活の補助であると理解していない 事実も、英年金アドバイザリー・サービス、TPASの調査から判明している。

現時点で老後に必要な生活費は単身者で最低年間1万7100ポンド、夫婦で1万8212ポンドとされているが、年金支給額は8000ポンドと半分にも満たない(1ポンドは142円程度。2017年57日現在)。不足分の1万ポンド強の穴埋めは、一体どこで補われるのか。

政府に依存するだけではなく、個人が老後に関する適切な知識を身につけ、堅実に準備できる環境を整える必要がある。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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