不安定な世界情勢や普及の広がりに後押しされ、価格が高騰中のビットコイン。5月25日には2779.08ドルに達した後、同日中にすぐ2347.11ドルまで急落するなど、浮き沈みの激しさも加速し始めている。

こうした動きからビットコインバブルの崩壊を懸念する声が、多方面で上がっている。

地政学リスクがビットコイン価格を後押し

ビットコインは今年4月に1000ドル台に突入後、5月後半に2000ドルを突破。昨年同月比のおよそ4倍の価格に上昇している(CoinDesk)。

価格高騰は、地政学リスクの拡大に起因する所が大きい。米政権交代、Brexit、北朝鮮問題に加え、各地で相次ぐテロ、内戦、世界経済崩壊の警鐘など、投資家を安全資産に押し流す要素は数え切れない。

これまで安全資産の代表格であった金を、ビットコインが初めて打ち負かしたのは3月のこと。当時1オンス1235.95ドルだった金の最高値を、ビットコインが1293.30ドルで上回った。5月26日現在は、ほぼ2倍の差をつけるまでに成長している 。

過去1カ月で9割上昇の副作用は?

しかしこうした絶好調ぶりを「バブル」と評し、行方を懸念する声が高まっているのも事実だ。ビットコインの価格変動の激しさについては広く認識されていたものの、過去1カ月のデータだけを見てみても、87%の上昇 は異例だ。

これがバブルであるか否かは判断しかねるが、何らかの副作用を伴う可能性は十分に考えられる。

異様な伸びを見せた5月25日を一例に挙げると、2507.94ドルから始まり、最高値で午後2時に2779.08ドルを付けたものの、9時間後には2347.11ドルまで下降。26日午前5時の時点では、2527.48ドルまで回復している。投資家が息をつく暇もない程の、価格のジェットコースターだ。

今回、価格を押し上げた要因は、JPモルガン・チェースやフィディリティといった国際大手が、仮想通貨への関心を強め始めた背景にあると推測される。しかしその後に続く急下落に関しては、納得の行く説明が見当たらない。ハッキングなど、投資家を不安に陥れるような出来事も報告されていない。

ビットコインはバブル崩壊直前の「急騰銘柄」?

通常の市場規模と比較すると、仮想通貨市場はまだまだ小規模だ。現在のビットコイン時価総額が415億ドル (Coin Desk)であるのに対し、Appleなどは8023億ドル(Nasdaqデータ) と、その差は歴然としている。ビットコインバブルが市場に与える影響など、取るに足らないレベルかも知れない。

英著名金融コラムリストのマシュー・リン氏 は、「投資家からの過剰な資金流入が、結果的に資本の不適正配分を引き起こす可能性」 などを、ビットコインバブル崩壊の兆候として挙げている。

ビットコインに限らず見境のない投資が、悲劇的な結果を招いた例は多々ある。一時期は猫も杓子もといった感が強かった「ユニコーン」への投資がピークに達した際、米証券取引委員会は「評価額に惑わされることなく、企業の実態を見極めるように」との注意を促した。

またリン氏はこれまでの経験から、「バブル崩壊直前に急騰する銘柄が必ずいくつかある」と、警戒心を露わにしている。確かに、ビットコインがその「急騰銘柄」でないとの保証は、どこにもない。

既に述べたように、ビットコインバブルが崩壊したところで、世界経済危機の直接的な引き金にはならないだろう。しかし「ビットコインが従来の資産とは全く異なる性質を持っている点を、市場は再認識しておくべきだ」と、リン氏は警告している。仮想通貨バブルの崩壊が引き起こす影響は、市場がまだ体験したことのない未知の世界だ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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