Alphabet、Apple、Facebookなど大手IT企業が注目しているのが「医療分野」だ。
各社専門の研究チームを立ち上げ、思考を読み取るコミュニケーション・インターフェイスからウェアラブル血糖値測定デバイスまで、より便利で暮らしやすい高齢化社会の創出に貢献しようとしている。
高齢化社会に伴う需要の拡大を受け、こうした大手企業による医療分野進出が、今後ますます存在感を高めて行くだろう。すでに「MediTech(医療テクノロジー)」や「HealthTech(ヘルス・テクノロジー)」といった造語も、生まれ初めている。医療用AI(人工知能)アプリなどの開発にも、注目が集まっているようだ。
発声や聴覚に支障がある患者のコミュニケーションに貢献
Facebookは昨年4月、Googleで数々の先進技術プロジェクトを成功させた経歴の持ち主、レジーナ・ダガン氏を責任者に迎え、ハード開発部門「ビルディング8」 を立ち上げた。ダガン氏は女性ながらにDARPA(米国防高等研究計画局)の局長も務めた凄腕実業家だ。
表向きは「極秘プロジェクト」とされているが、実際は思考を読み取るコミュニケーション・インターフェイス「サイレント・スピーチ」や人工蝸牛(聴覚を司る感覚器官)を通した信号知覚装置 など、近未来のコミュニケーション・モデルの開発であることを、ダガン氏自ら公表している。
「サイレント・スピーチ」とは、脳に浮かんだ言葉(心の声)を脳派から解読する技術である。普段はほぼ無意識にやり取りしている会話や読み書きだが、実際には聴覚性言語中枢・視覚性言語中枢・運動性言語中枢など、複数の中枢が連動することで行われている。
Facebookはウェアラブル・センサーを利用することで、「発言命令」と共に中枢に送られた言葉を解読するシステムの開発を目指している。目下の目標は1分100単語。
また同時進行中の「皮膚で聞く」技術は、皮膚に人口蝸牛の機能を与えるというものだ。実現すれば、発声や聴覚に支障がある患者のコミュニケーション手段など、医療・介護分野に一大革命をもたらすだろう。
光センサー式血糖値測定は実現するか?
医療分野への関心を強めているのはAppleも同じだ。こちらも「極秘プロジェクト」と称した、糖尿病治療ツールの開発が進められている。
このニュースを4月に報じたCNBC によると、「注射針なしでは困難」とされる正確な血糖値測定を、光センサーで代用する可能性を探索しているそうだ。2010年には自宅できる血液検査デバイスの開発会社、Corも買収している。
血糖値を監視するセンサーの開発は、故スティーブ・ジョブス氏のアイデアだったという。AppleWatchなどに搭載された光センサー式血糖値測定が完成すれば、世界中の糖尿病患者に大きな恩恵をもたらすことになるだろう。
Alphabetは生命科学部門を設立 手術ロボット開発中
Googleが挑む医療分野は、手術ロボット開発だ。
Googleの生命科学部門だったGoogleライフ・サイエンスは、2015年の組織再編を機に、親会社Alphabetの傘下、Verilyライフ・サイエンス として生まれ変わった。その後、ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下の医療機器会社、エチコンと提携し、Verb サージカル を設立している。Verbでは、手術の助手的役割を果たすハイテク・ロボット開発が進められている。
Googleはノバルティスとの提携のもと、血糖値が測定できる「スマート・コンタクトレンズ」 の開発にも着手していたものの、どうやらこの開発は暗礁に乗り上げたようだ。「涙液に含まれるグルコース値から、正確な血糖値を測定するのは困難」とのハードルを越えることができ出来なかったものと思われる。
高齢化社会に伴う需要の拡大を受け、こうした大手企業による医療分野進出が、今後ますます存在感を高めて行くだろう。すでに「MediTech(医療テクノロジー)」や「HealthTech(ヘルス・テクノロジー)」といった造語も、生まれ初めている。医療用AI(人工知能)アプリなどの開発にも、注目が集まっているようだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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