改正銀行法が5月26日の参議院本会議で可決、成立した。FinTech企業に金融庁への登録制を導入する事が柱となる。金融庁が中心となり、FinTechの普及に向けた環境整備を進める事で、銀行とFinTech企業の連携が強化され、より使い勝手の良いサービスが生まれる可能性が広がる。

銀行にはAPI開放を促す

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(写真=PIXTA)

今回成立した改正銀行法は、電子決済等代行業者と呼ばれるFinTech企業に登録性を導入する。金融庁の管轄下に入り、適切な情報管理や業務運営を行う義務を負う。また、情報漏えい等の損害が発生した際の賠償責任の分担を契約に盛り込む事も求める。銀行にとってみれば、FinTech企業が金融庁の管轄下に入る事により、業務面の連携を行いやすくなるメリットがある。

改正銀行法の成立により、一定の義務を負うFinTech企業であるが、こちらにもメリットはある。同法はAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)と呼ぶ情報システムの開放を銀行に求めている。銀行の口座情報や振込、振替といったサービスを外部企業が活用する場合にはAPIを経由する必要があり、APIの開放はFinTech企業が便利なサービスを提供するのに欠かせない。

各銀行は改正法案の公布後9ヵ月以内にAPI開放についての方針を公表しなければならない。また、開放を表明した銀行は、法施行後2年以内にAPIを整備する必要がある。API開放は努力義務に留まるものの、多くの銀行がAPI開放に踏み出す可能性が高い。家計簿アプリや企業向け会計サービス等で銀行との連携が更に進み、より使い勝手の良いサービスが生まれる。

先行する欧米諸国に追いつくよう法規制の整備を急ぐ

改正銀行法の成立は2年連続となる。金融庁は2015年9月の「金融行政方針」でFinTechに速やかに対応する事を表明しており、それに沿った法整備を進めている。昨年の改正銀行法では、銀行の出資制限を緩和し、FinTech企業への出資を行いやすくした。4月より試行され、三井住友フィナンシャルグループ <8316> は早速生体認証の仕組みを提供する会社の設立を発表している。

法整備を急ぐのは、FinTech先進国と呼ばれる米国、英国等に日本が遅れを取っている事が背景にある。アクセンチュアの調査によると、2015年のFinTech投資額は米国の122億ドル、英国の9億7400万ドルに対し、日本は6500万ドルに留まる。米国の0.5%、英国の7%にしか満たない規模となっている。こうした状況を踏まえ、先行する欧米諸国に追いつく為には国を挙げた法整備が欠かせない。

今回成立した改正銀行法は2018年春に始まる見通しとなっている。FinTechサービスは増え続けており、利用者を大きく伸ばしておるサービスも多い。一方で現状のサービスは提携銀行が限られている等、完全に便利なサービスとは呼べない状況が多く見られるFinTechを前提とした法改正は、新しいサービスの提供や、既存サービスの利便性を大きく向上させる事を後押しする。( FinTech online編集部

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