「業績管理(パフォーマンス・マネージメント)」をAI(人工知能)化する動きが、急速に広がっている。

精密なデータ分析とリアルタイムな評価で、現代の事業環境に最適な目的設定や戦略策定に活用できるとの期待が高まる。一部の企業はすでに既存の評価基準に基づいた評価法から、ビッグ・データなど最新テクノロジーを活用した評価法へと移行している。

実際にビッグデータなどを活用している企業は7%

業績管理は多くの企業に採用されている。企業の業績を最適化する目的で、個人・チーム評価や目標管理をとおし、総体的な効率性や戦略の効力を測定するという手法だ。「実践・検証・軌道修正」のサイクルから、最終目標達成に近づける役割を果たす。

アドバンスド・パフォーマンス・インスティテュートが3000社の企業を対象に実施した調査などから、31%が「従来の事業管理手法に満足していない」と の結果が報告されている。

自社の事業管理手法に満足しているのはわずか6%。しかしビックデータを業績管理に採用している企業は今のところ7%にとどまる。

メトリックスに基づいた評価法では基準がすでに設定されているため、柔軟性に乏しい、あるいは分析がかたよりがち。事業環境が著しい変化を遂げた現在、最適な評価法とはいいがたいだろう。巨大化した組織やネットワークを適切に分析するには、多様性に欠ける。

自社の管理ソフトのAI化に挑戦する米ベター・ワークス

そこで急速に注目されているのが、AI技術を事業管理に採用するという発想だ。次世代事業管理ソフトをBMWやAOLなどの大手に提供している、米スタートアップ、ベター・ワークス も、自社の管理ソフトのAI化を試みている。

ベター・ワークスはすでに、随時更新可能なオンゴーイング(進行)型事業管理システムを開発し、時代の需要に見合った業績評価法を実現している。AI技術を取りいれることにより、さらなるHR(人的資源)領域の進化が期待できると確信している。

AIならばデータ分析を正確に行うと同時に、「ほかの従業員と比較してしまう」「最近の業績に判断基準を置く傾向が強い」といった、人間による評価の弱点を難なく克服することが可能だ。「上司うけが悪いので、よい評価がもらえない」などという従業員からの不満も、一挙解決される。

また通常の評価とは異なり、リアルタイムで分析・評価が行われる点も、戦略をたてるうえで大きな恩恵をもたらすだろう。頻繁に自らの業績を見直すことは、従業員にとってもプラス作用になるはずだ。

IBMは従業員の生産性、潜在能力をデータ化

AI技術を利用した評価は、科学やITの領域にも進出しそうだ 。通常、技術者の開発したソフトや研究者の論文などの検証として行われる「ピア―ー・レビュー(同僚あるいは同領域の専門家による評価)」だが、やはりここでも人間による評価の弱点は避けられない。

AI特有の、精密なデータ分析能力と、感情や、先入観を交えない判断能力が、最も強く求められる領域である。
またIBMは2012年に、HR管理ソリューション、Kenexaを買収 し、従業員の生産性や潜在能力をデータ化することで、未来の人材育成に役立てている。

今後、AIやビッグデータを主幹とするHR開発や事業戦略開発が、組織を最適化するうえで必須となっていくものと予測される。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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