近鉄グループホールディングス(近鉄) <9041> と三菱総合研究所(MRI) <3636> は「あべのハルカス」で仮想地域通貨「近鉄ハルカスコイン」の実証実験を始めると発表した。ブロックチェーン技術を活用した取り組みで、9月1日から1カ月間で本格導入に向けた課題を洗い出す。

5000円で1万円相当のコイン付与

仮想通貨,三菱総研
あべのハルカス(写真=PIXTA)

「近鉄ハルカスコイン」は「あべのハルカス」内の店舗約200店や展望台などで使える。近鉄グループのカード会員の中から抽選で選ばれた5000人が対象で、現金5000円を支払うと1万円相当のコインが付与される。

実証実験中は対象店舗の支払い時に専用アプリのQRコードをかざせば、支払いが完了する。ブロックチェーン技術を活用した地域仮想通貨の本格導入に向け、技術的検証や運用課題の抽出を行う。

近鉄が描くのは、仮想地域通貨経済圏の拡大による沿線活性化である。「あべのハルカス」だけでなく、自治体や他の企業を巻き込みながら、仮想通貨経済圏を沿線に沿って広げていく事を目指す。更に、円だけでなく他の仮想通貨との交換が出来る取引機能を持つ事も目指す。利便性の高い地域仮想通貨となる事で、地域に人を呼び込む仕組みを作る。MRIとの協業に加え、今後は三菱東京UFJ銀行とも連携していく構えだ。

ブロックチェーン技術の活用に向けた動きが進む

今回の実証実験の核となるのがブロックチェーン技術である。ビットコインの中核技術としても知られている。ブロックチェーンの特徴である相互承認を活用すれば、巨額のシステム負担無しに地域仮想通貨を導入できる。かすみがうら市では、同技術を活用した地域ポイント制度を今夏より導入し、地方創生を図る。自治体だけでなく、企業内通貨、大学内通貨等、様々な場所で同技術の実用化が検討されている。地方経済の衰退が叫ばれる中、FinTechはその解決策となる可能性を秘めている。

MRIも今回の実証実験でプラットフォームを確立させ、近鉄だけでなく自治体等にも横展開していく事を目論む。同社は三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG) <8306> と三菱東京UFJ銀行が主催する、金融サービスの変革を目指すスタートアップ支援プログラム「デジタルアクセラレータ」にも参画しており、FinTechに力を注いでいる。

しかし、ブロックチェーン活用への動きは国内外で進み、スタートアップから大企業まで多くの企業が熾烈な競争を繰り広げている。ブロックチェーンの基幹システムを開発する米ベンチャー企業のR3は新株発行により100億円を超える資金調達を行った。出資に応じたのはMUFGやSBIホールディングス <8473> を含む各国の大手金融機関であり、その数は40社を超える。同技術の活用無くしてFinTechは成り立たないといっても過言ではない。熾烈な競争に負けないようMRIやMUFGもアクセルを強く踏み込む。( FinTech online編集部

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