Googleを擁するAlphabetがAI(人工知能)専門のベンチャー・キャピタル(VC)事業を設立したことが、複数の関係者の証言から判明した。

Gooleエンジニア部門のヴァイス・プレジデント、アナ・パターソン氏 の先導のもと、ベンチャー投資家ではなくエンジニアを中心に設立され、手始めに100万ドルから1000万ドル(約1億1125万円から11億2500万円)の小規模な投資を、外部から調達する予定だという。

ピチャイCEOが「AI優先宣言」

Google初のAI 投資部門設立を最初に報じたWebメディアAxios によると、Googleのベンチャー子会社CapitalG (旧Google Capita)とGV(旧GoogleVenture)から、AI部門を独立させるかたちで立ちあげられ、将来的にはGVによる共同投資も視野にいれているそうだ。
Googleはコメントをひかえているものの、「AI優先宣言」というサンダー・ピチャイCEOの発言ひとつ をとっても、相当AIに入れ込んでいることは間違いない。

Googleはすでに数々のAIプロジェクトに取り組んでいる。2014年には英国のAI子会社、ディープマインド・テクノロジー (現Googleディープマインド)を4億ドル(約446億2400万円)で買収。2016年に「人間を初めて囲碁で破ったAI」を発表し、一躍注目を浴びた。

「人々の生活の向上に役立つAIの開発」をミッションに掲げるディープマインドは、ニュージ―ランド出身のAI研究者シェイン・レッグ氏 や、コンピューターゲームのデザイナーとしても有名な英国のデミス・ハサビス氏などが2010年に立ち上げた。

また企業や研究者が投稿したデータから、データ・アナリストなどが最適モデルを競い合うプラットフォームKaggleを、2017年3月に買収 したほか、Kaggleを通して自らコンペの主催 も行っている。
こうした一連を動きを見ても、新たなAI投資部門の新設が、今後のGoogleの事業戦略の重要な一部であることがわかる。

将来的にはGoogle全商品・サービスをAI化?

より身近なところでは、2016年に発表した対話型AI「Googleアシスタント」の進化に取り組んでいる。AmazonのAlexa、AppleのSiri、MicrosoftのCortanaなど、ライバルIT企業が続々と対話型AIアシスタントを発表している中、2017年5月に開催された開発者コンファレンス「Google I/O」 では、より進化したバージョンを披露。

様々な新しい発想が紹介されたものの、AI・機械学習関連の発表が圧倒的に多かったようだ。GoogleはAIの採用範囲を「Googleアシスタント」だけではなく、「Googleフォト」や「Googleクラウド・プラットフォーム」などにも広げ、将来的には自社のほぼすべての製品やサービスにまで組みいれる野望に燃えている。

注目すべきプロジェクトは、機械学習システムからさらに多くの機械学習システムを生みだすという「AutoML 」だろう。すでに初期実験成果から、無限の可能性を秘めていることなどが確認されている。

ピチャイCEOの熱意が実を結ぶ日はそう遠くはないはずだ。Googleがライバルを制し、AI企業として新開地のトップを突き進む姿は、未来のIT企業の在り方を象徴しているような気がする。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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