アップルとソフトバンクを比較する

ここまで述べてきたリスクとリターンを考えたとき、お勧めなのがアップルとソフトバンクの社債です。2013年4月、米国アップルは170億ドル、同社において初の社債発行を行い話題となりました。続けて、翌2014年4月にも120億ドルの社債を発行しています。

それまで無借金経営だったアップルが方針転換したとして、アップルの「終わりの始まり」だとの指摘もされました。株主還元が目的とのことですが、最初の社債発行時のバランスシートをみれば1450億ドルのキャッシュがあります。債券を発行した意味とは何でしょうか。それはアップルのキャッシュの多くがタックスヘイブンにあるアップル海外法人が保有しており、そのキャッシュを米国へ送ると多額の法人税率の支払い義務が発生するからです。低金利の現在であれば社債を発行した方が、わずかな金利負担で多額の資金を調達できます。また、社債は負債のため米国での課税を低く抑える利点もあります。つまり、無借金経営からの方針転換は更なる飛躍への一歩と捉えるべきでしょう。

一方、ソフトバンクは2014年4月、総額3000億円の個人向け社債を発行しました。調達した資金は買収した米スプリントの運営資金や借り入れ返済に充当されます。それまでも定期的に社債を発行してきた同社ですが、個人向けに社債を発行する狙いは一つ。個人向け投資家であれば償還まで保有する傾向が高いためです。機関投資家などであれば格付けなどに左右され途中売却することも多く、今回のような大型買収案件などでは足かせになってしまう可能性があるからです。

それぞれ企業として着実に成長しており、両社とも信用リスクは低いながらも、金利は1%〜2%弱で発行されています。投資する際には、この金利と最低額面金額を比較しながら新発債の発行状況を確認しましょう。また、アップルは米国の企業なのでドル建ての社債です。つまり、為替変動リスクもしっかりと加味して考える必要があります。

元本保証で高金利?

社債の購入にあたって「元本保証」と証券会社や銀行の販売員が言うと、それは紛れもなく金融商品取引法違反になるので、彼らは絶対に「元本保証」と口にしません。そのため、利回り0.1%を下回るMMFや短期国債など低リスク商品で運用されている投資家の中には、元本保証ではないことを何度も確認し社債を投資対象としないとする方もいます。しかし、そのMMFも投資信託の一種であり決して元本保証ではないのです。また、国が発行している国債ですら元本保証ではありません。元本を保証している国が破綻する可能性があるからです。しかし、これらの商品が元本割れする可能性はかなりゼロに近いです。これは、倒産する可能性が極めて低いアップルとソフトバンクにも言えることです。それでありながら金利は1%を上回っています。為替リスクの違いがあるので、両者を単純に利回りだけで判断することは出来ませんが、資産は日本円でという方ならソフトバンク、円安になったときに保険やまたその為替差益を享受したい方ならアップルということが言えるでしょう。またそれぞれの社債を保有しリスク分散することも選択肢の一つです。