「ブロックチェーン技術を土地登記に活用する」という共同プロジェクトを、ジョージア共和国政府が拡大中だ。ジョージアはかつて日本では「グルジア」と表記されていた。

米ブロックチェーン・スタートアップ、Bitfuryグループ との提携で、土地の登記から取引までをブロックチェーン上で記録・管理し、将来的には土地の売買、抵当権、公証制度など、広範囲な領域に活用を拡大するという。

著名経済学者「世界中で法的に有効な資産を所有している人は3割以下」

ブロックチェーン土地登記という試みは様々な企業が進めているが、一国の政府が正式に導入するのは今回が初めて。安全で透明性の高い不動産管理環境を構築することを狙いに、2016年4月からプロジェクトに着手していた。

現在は今夏の本格始動を目途に準備を進めており、将来的にはスマホで登録から管理まで行えるシステムを視野に入れている。

このプロジェクトに参加しているペルーの著名経済学者、ハーナンド・デソト氏曰 く、「世界人口73億人のうち、法的に有効な資産を所有しているのはわずか20億人しかいない」という。

「遺産相続をしたら未登記の不動産があった」など、けっして珍しい話ではない。不動産登記は法律で義務づけられているものの、様々な事情で未登記扱いの建物や土地が世界中に存在する。

ブロックチェーンを利用することでこうした資産の所有者を明確化させると同時に、外部から監査可能な環境に創り変えるという動きだ。

ウクライナ政府にも技術を提供するBitfury

マイニングプールやマイニング用チップでも有名なBitfuryグループは、2017年4月からウクライナ政府 にもブロックチェーン技術を提供している。

ウクライナ政府は政府の全電子データのブロックチェーン化をもくろんでいるが、これは一足先に公文書管理のブロックチェーン化を発表したドバイ政府を意識した動きかと推測される。

ブロックチェーン技術を国家再編計画の一環としてとらえている点が、ジョージア、ウクライナ、ドバイに共通する。大胆なデジタル改革に挑むことで、新たな行政基盤だけではなく、ビジネスチャンスに発展させる意図も感じられる。

すでに多くの国・地域の政府がブロックチェーン技術の恩恵にあやかろうと、それぞれの取り組みに乗りだしている。Bitfuryグループのような活きた技術を提供できるスタートアップは、今後も引く手あまたとなるはずだ。

イーサリアムベースのデジタル国家「Bitnation」

またイーサリアムベースのデジタル国家、「Bitnation」 なるものも生まれている。

国・地域が単体で管理する個人情報とは異なり、ブロックチェーン上に個人のIDや婚姻・出生・死亡記録などを登記することで、国境にとらわれない永久的な登記ネットワークが形成されるという、目からうろこの画期的なプロジェクトだ。本来の目的は、紛争解決や安全保障問題に焦点をあわせた低コストな統治サービスの提供にある。

今後ブロックチェーンの利用はプライベートかパブリックかを問わず、ますます多様化するだろう。問題点のクリアなど実用化には相当の時間を要するケースが多いだろうが、試行錯誤を繰り返すことで、新たな生活基盤が形成されると期待できる。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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