「保険で貯金」という考え方の人が、60代以降の世代には多い。しかも地方に行けば行くほど、この古い常識に囚われている人がたくさんいる。情報過多の時代に、スマホでググったら「保険と貯金は違う」「保険で貯金を試みるデメリット」という記事を目にすることができるのに、なぜこういう結論に落ち着くのか。そしてこの考え方に囚われるとどうなるかを考えてみたいと思う。

赤面セールストーク「貯金は三角、保険は四角」

保険,貯蓄型
(写真=PIXTA)

私が外資系保険会社で営業職をしていたころ、お客様に保険の魅力を説明する一番わかりやすい言い回しが「貯金は三角、保険は四角」だった。

例で説明すると、こうなる。

「毎月1万円貯金をしていたら、100万円を受け取れるのに8年かかるが、もしこれが死亡保険金額100万円の生命保険(死亡保険)だったら、一か月後、つまり一回の保険料1万円を支払っただけでご家族は保険金100万円を受け取れますよ。だから保障の効果ってすごいと思いませんか? さあ、保険に入っておきましょう!」

私自身、こんなセールストークをよくも平気でしたものである。こうして文字に起こしてみると、今では赤面モノのセールストークだと思うのだが、実はこれが地方ではまだまだ有効だったりする。

もちろん、必要な保障を準備するために保険を活用することには異論はない。問題なのは、保険商品のコストをあまり考慮しない点でだ。だから「掛け捨て保険は損するから、保険料は高いけど、貯蓄型の保険に入る」という、合理的とは言い難い結末になりがちなのだ。

養老保険5本、終身保険3本に加入 60代女性の勘違い

先日、60代の女性が相談に来られた。なんでも「お金がない」ので、もしかしたら保険を整理したほうがいいかもしれないので教えて欲しいとのこと。手ぶらで来られたので、後日加入している保険の証券を持参してくださいとお願いした。

そして後日、持参した保険証券を数えてびっくりした。某A生命ばかりで、養老保険に5本、終身保険に3本加入していたのである。

しかも養老保険のうち3本は全期前納で保険料の支払いは終わっていたが、終身保険を含めた残り5本は、収入が年金だけになる今も律儀に支払っていた。

「こんなに保険に加入していますが、保険料を支払うの、しんどくないですか?」

自分ならば払いたくないが、この人の価値観はだいぶ私とは違っていた。

「貯金は苦手なので、保険で貯金をしている。だからしんどくても仕方ない」

こういう人に、貯金と保険は違います、とか、保険って早期解約したら損しますよね、とか言っても意味があまりないので、あえて違う種類の質問に変えてみた。

「◯◯さん、あなたの今の金融資産って、どれくらいあるか答えられますか?」

ところが、その答えは、私の意表を突くものだったのである。

貯金ができないから「保険を活用する」が本当の理由ではない

「私が死んだら、どれくらいお金があるかってことよね」

「つまり、◯◯さんが亡くなったら、◯◯さんの旦那さんが困るから、こんなにいっぱい保険に加入しているのですか?」

「そう、旦那が困るから、お金が要るから」

最初は「貯金ができないから、保険で貯金をしている」ということだったが、実は死亡保険金が要るという理由が、保険に沢山加入している理由に変わってしまった。

最近の保険の予定利率は、この◯◯さんが加入している10年~20年満期の円建ての養老保険は、50代~60代だと、210万円の保険料を支払って10年後に200万円を受け取るというぐらいのレベルである。

こんな予定利率では「保険で貯金」とは言い難いのは理解できるだろう。また、旦那さんに死亡保険金を残したいから保険に加入するならば、何本も必要ではないことは当然である。

お金を貯める「意義」を本人が持てていない

さらに「満期が◯年後に一つ、◯年後に二つ来ますが、どうしますか?」と問いただした時、「またそれを保険に入れると思う」という答えを聞いた時、なぜ「保険で貯金」に拘るかが理解できた。

それは保険を使わないと貯金ができないという単純な理由ではなくて、手持ちのお金を自分らしく使えない、という理由からなのである。

つまり、お金をどう使うかを考えていないのだ。

例えば◯年後に教育費が要るから、◯年後に旅行に行きたいから、というライフイベントが無い人が、お金を持て余していて、保険でお金を「保管している」だけだったのだ。

そう言えば以前もこうした養老保険に何本も加入している人がいたが、確かに、同じようにライフイベントが無い人であった記憶がある。だから「私が死んだら、◯◯が困る」という、現実感がないリスクを想定して、それを保険加入の理由づけにしているのだろう。

あなたが作り上げた資産は、あなたに使って貰えるのを待っている。だからとりあえず保険という選択肢は一度忘れてみて欲しい。きっとあなたのライフイベントが見つかると思う。

石川智(いしかわ さとし)
ファイナンシャル・プランナー 終活アドバイザー
オフィス石川 代表。1966年高知県生まれ。トヨタ系ディーラー、外資系保険会社の営業職を経て、2010年ファイナンシャル・プランナーとして独立起業した。一般消費者向けの相談業務だけでなく、「障害者とお金」「高齢者とお金」「終活」をテーマに広く講演活動を行っている。ライフワークとして「地域福祉とライフプランニング」に取り組んでいる。

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