「IoT」という言葉は、最近よく目にする人も多いのではないでしょうか。「モノのインターネット(Internet of Things)」の頭文字で、いわゆる情報端末やコンピュータだけでなく、身近なさまざまな機器にもセンサーや通信デバイスが搭載され、インターネットに接続して、それらの機器の状態、動き、位置などを感知・制御して、利便性を向上させるというものです。

そのIoTの波が、保険業界にも訪れたという話題が注目を集めています。情報通信が飛躍的に発展する現代において、保険とどのように関わっていくのでしょうか。

衝突被害軽減ブレーキ(AEB)で自動車保険料が割引

IoT
(写真=evp82/Shutterstock.com)

2016年12月9日、損害保険料率算出機構は、自動車保険の参考純率改定を発表した。損害保険の保険料率は、事故が発生した場合に保険会社が支払う保険金にあてられる部分(純保険料率)と、各保険会社が保険事業を営むために必要な経費等にあてられる部分(付加保険料率)からなっていますが、「参考純率」は、前者(純保険料率)の参考として、損害保険料率算出機構が会員保険会社に提供しているものなのです。

発表された参考純率は、2016年11月24日に金融庁長官宛に提出され、発表当日の2016年12月9日に金融庁による適合性審査結果通知を受領した、最新(2017年5月時点)の参考純率です。

今回の改定の目玉は、2018年1月1日以降に自動車保険の「型式別料率クラス』の仕組みの一部を改善することです。「衝突被害軽減ブレーキ(AEB)装着車の場合、新たな保険料係数(係数0.91=9%割引)にする」というものです。衝突被害軽減ブレーキ(AEB=Autonomous Emergency Braking)とは、センサー類によって自動車が周囲の障害物を感知し、ドライバーへの警告やブレーキの補助操作などを行うシステムのことです。

AEB装着車はそうでない車よりも安全性の向上が見込めるため、そのぶん保険料を安くしましょう、というわけです。

IoTで「保険のカスタマイズ」が進行する

当然のことですが、保険は対象となる行為・モノに関して、そのリスクの多寡によって保険料が上下します。例えば自動車保険の場合、車種やドライバーの年齢、過去の事故歴などを参考に保険料が決定しますが、IoTによる自動車の「インテリジェント化」が進めば、さらに細かなカスタマイズが可能になってきます。

実際に諸外国では近年、「テレマティクス保険」と呼ばれる自動車保険が注目を集めています。「テレマティクス」とは「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を組み合わせた造語で、自動車に搭載されたセンサーや情報機器を駆使し、その情報をもとに保険料を算出しようというものです。まさに「IoT保険」と呼べるものです。

テレマティクス保険にはPAYD(走行距離連動型)とPHYD(運転行動連動型)の2種類がありますが、特に欧米では、個々の運転者の特性を把握し料率を決める後者を中心に普及が進みつつあります。ヨーロッパやアメリカでは、今後2020年には自動車保険契約件数の約3割を占めるまでになるのでは、という予測もあります。

きちんと安全運転をする人であれば、現在よりさらに保険料が安く済む可能性が高いIoT保険は(もちろん逆のケースも考えられますが)、運転状態が保険料に直結するため、安全運転の増加・交通事故低減にもつながることが期待されています。

さらに今後は、自動車保険だけでなく、火災保険(家屋)、さらには生命保険にも、こうした動きは広がっていくのではと考えられています。(提供: IFAオンライン

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