越境ECとは、国をまたいで行われる海外向けインターネット通販のことです。なかでも日本から中国へ向けての越境EC市場は急拡大を続けていて、今後も著しい成長が期待されています。一方で中国政府による税制改革に左右されるなどのリスクも存在します。日本企業の動きを追ってみました。

2014年の「T-mall国際」スタートが転機に

EC
(写真=Nata-Lia/Shutterstock.com)

越境ECが普及する前から高品質な日本製は中国の消費者に人気でした。日本製の紙おむつの性能の良さが評判を呼び、個人輸入や旅行時の購入がニュースにもなったことも記憶に新しいのではないでしょうか。

日本で購入した商品を中国の個人間取引サイトである淘宝網(タオバオワン)などで転売する「ソーシャルバイヤー(代購)」の台頭もこの頃です。しかし価格が吊り上がったり、粗悪品が流通したりするなどの問題が浮上し、適正な流通ルートが求められるようになりました。

急拡大の契機となったのは、2013年に中国最大の電子商取引会社アリババ・グループが立ち上げた「T-mall国際(天猫国際)」です。もともとT-mallは中国のEC市場で最大の規模を誇るサイトですが、出店が認められているのは中国に法人がある会社のみでした。新たに設けられたT-mall国際ではこの要件を不要にし、さらに2015年には国・地域別の専門館を開設することで各国企業による出店が急増しました。同様の動きは二番手の京東商城(JD.com)でも行われ市場は大きく拡大しました。

2016年「独身の日」は日本が1位に。おむつ人気は不動

人気の商品カテゴリは美容関連、紙おむつをはじめとするマタニティ・ベビー用品です。粉ミルクやスナック菓子などの加工食品も安全面から引き合いが強いカテゴリです。昨今は、日本への旅行時に「爆買い」した商品を帰国後にリピート購入したり、日本で購入した商品についてのSNS上の口コミを見た人が同じものを買ったりという流れが目立っています。

毎年11月11日は、中国では「独身の日」とされ、インターネット上で大規模セールが行われる。2016年の独身の日のセールでの売上は、アリババ・グループ全体で過去最高、前年比32ポイント増の1,207億元(約1.9兆円)と驚異的な金額になりました。

T-mall国際の売上は「開始から9時間半で2015年実績を抜いた」(数字は非公開)との発表で、国別ランキングでは2015年に1位であったアメリカを抜いて、日本が1位を獲得した。企業別のランキングでは、ムーニー旗艦店とミキハウスの旗艦店がそれぞれ3位と4位にランクインしました。 またT-mall全体の部門別ランキングを見ると、ユニクロが女性アパレルではトップ、男性アパレルでも5位と大健闘しています。

小売店ではドラッグストアのキリン堂、健康関連商品を販売するケンコーコムがT-mall国際にいち早く出店。アスクルが運営する日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」や通販大手の千趣会も育児用品部門を中心に好調です。

モール認定パートナー企業に頼らざるを得ないビジネスモデル

一方で出店を支えるビジネスも堅調です。というのも多くの場合、モール側が認定するパートナー企業の支援を受けなければ、出店審査を通過できないからです。また、運営に際しても言語や文化の壁はもちろんサイトへの集客導線の確保や法規制への対応、チャットでの問い合わせ対応などを日本企業が独力で行うには限界があります。

T-mallの場合はTPと呼ばれるパートナー企業が数多くあり、出店サポートや運営代行などを一手に請け負うビジネスを展開しています。多くは中国の企業ですが、日系企業でもトランスコスモスやエフカフェなどが力を入れています。

物流面では保税区の活用が広がっています。従来の日本から中国へ個別に配送する方法や、一般貿易で行うやり方に比べて、コスト面・スピード面で圧倒的に有利なため、多くの日本企業が利用しています。一方で、保税区を活用した越境ECに関しては2016年4月に税率の変更などを含む大幅な制度改革が行われました。しかし突然の発表に現場が大混乱したため急遽猶予期間が設けられ、本格スタートは2018年からになる見込みです。

今後もマーケットの拡大は予想されますが、税制やモールの制度変更によるリスクも無視できません。このため最初から自力で店舗を出すのではなく、パートナー企業に商品のテスト販売を委託するなど、段階を踏んで越境ECを始める動きも見られています。 (提供: IFAオンライン

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