従業員の配置転換に伴い、転勤が生じる場合があります。転勤を命じられた従業員は引越しする必要がありますが、この「引越しに伴う費用負担」はどのようになるのでしょうか。会社がすべて負担しなければならないのでしょうか。

引越し費用の負担は社内規定で定められる

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(写真=Sunny studio/Shutterstock.com)

転勤に伴う引越し費用について、会社が必ず負担すべきという法律はありません。しかし、実際には費用の一部を会社が負担、全額会社負担など、企業によってさまざまです。引越し費用の負担は福利厚生の一環となります。会社は負担額の割合を自由に定めることが可能ですが、社員間で不平等が生じてはならないため、社内規定によって定める必要があります。

社内規定で定める場合は、距離に応じて負担額を定めるもの、一律に負担割合を定めるもの、全社員1回の転勤ごとに金額を定めるものなどさまざまです。これらを明確に定めておくと、従業員の不満も生じにくくなります。

引越し費用の仕訳項目

従業員の転勤に伴う引越し費用について、会社が負担する場合、経理上はどのような仕訳になるのでしょうか。引越し費用についてはさまざまな種類がありますので、個別に仕訳する必要があります。

まず、転居に伴い新しい住居を借りる際、敷金や礼金を支払う必要があります。敷金は、のちのち精算される性質を持つため、差し入れ保証金として処理しておきます。また、礼金については、社宅規定があれば、借り上げ社宅として会社が負担する性質のものですので、福利厚生費として仕訳しますが、そうでない場合は、支払い手数料に仕訳します。

また、仲介不動産会社を介して賃貸住宅の契約をする場合は、仲介手数料が必要になりますが。この仲介手数料も礼金と同じように扱います。しかし、この費用は消費税の課税対象となるため、全く一緒の扱いではありませんので、注意が必要になります。

引越し会社への費用については、社内規定で定める範囲で負担する金額は荷造り費用として仕訳を行います。そして、従業員が転勤の地へ移動する交通費については、旅費交通費で仕訳をすることになります。これは、出張などと同じ扱いになっています。

このように、ひとくちに引越し費用といっても、種類がさまざまあり、仕訳の方法も異なることが多くなっています。そのため、福利厚生という観点からだけでなく、こういった仕訳の点からも会社としてはどこまで負担するのかを明確に社会規定に定めることが必要となるのです。

引越し費用=転居費は特定支出控除

会社が引越し費用を一部しか負担しない、全く負担しないような場合においては、従業員側が必要経費として所得税の控除を受けることが可能になります。これを「給与所得者の特定支出控除」といいます。この控除を受けるためには、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額が「その年中の給与所得控除額×1/2」という条件を満たす必要があります。

また、従業員が確定申告を行う場合は、給与の支払者の証明が必要となります。そのため、従業員からこの適用を受けたいと要請を受ける場合、福利厚生の担当者として、この証明に関する手続きを行う必要があります。

転勤に関する社内規定を整備しておこう

転勤に際しては、配置転換に伴いさまざまな手続きや社内整備、従業員が住む家など多岐にわたる費用が発生することになります。そのため、どの部分を会社側が負担するのか、きちんと社内規定で定めることが大切です。

負担しない場合でも、従業員が確定申告を行う際には、必要な手続きなどがあることを留意する必要があるでしょう。いずれの場合にも、社内規定で整備しておくことで漏れを防ぐことができます。従業員の不満が高まらないよう、早めに整備や見直しをしておくことをおすすめします。(提供: フクリ!

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