総務省は人口減少で地方議会が組織できなくなる事態に備え、議会に代わって有権者が直接、自治体の予算案や施策を審議する「町村総会」の研究に入る。大学の研究者らで構成する有識者会議を7月にも設置し、本格的に町村総会のあり方を検討する。

高知県大川村が町村総会の検討に入ったことを受けた措置で、人口減少が深刻な地域の議会維持策についても意見交換する。しかし、山間部や離島など過疎地域の自治体は既に議員の担い手不足だけでなく、行政のやるべき仕事さえ維持しづらくなってきた。町村総会の議論が始まる現状は過疎地域消滅の足音が高まってきたの裏返しだ。

町村総会は有権者が予算案や条例案を直接審議

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人口減少に頭を抱える元祖限界自治体の高知県大豊町。大川村の騒動は他人事でない(写真=筆者、2015年12月撮影)

地方自治法は町村が条例で議会の代わりに選挙権を有する者の
総会を設置できると規定している。これが町村総会で、住民が自治体の予算案や条例案などを直接審議する仕組みだ。

定足数など開催のルールは町村議会に関する地方自治法の規定が準用されるが、地域の実情に合わせて条例で定めることもできる。類似した直接民主主義の制度はスイスの一部で実施され、州法改正案などに住民が自由に発言し、挙手で表決している。

現在、町村総会を設置している自治体はない。過去には東京・八丈小島の旧宇津木村(現在の八丈町)で1950年代に実施された例があるだけ。旧宇津木村では総会を年に2回ほど村の小学校で開き、定足数が住民の半数以下でも開催されていたという。長野県王滝村では2005年、総会設置を求める条例案が議員提案されたが、否決されている。

総務省が町村総会を検討するのは、全国の過疎地域で議員の担い手不足が深刻化しているからだ。2015年の統一地方選では新潟県粟島浦村など4町村議会議員選挙で、候補者が定数に1人満たなかった。

総務省は有識者会議で町村総会運営上の問題点を洗い出すとともに、夜間、休日議会の普及など町村議会存続に向けた方策も検討する考え。検討結果を基に過疎地域の自治体に対し、適切な助言をするのが狙いだ。

検討の前段階として全国町村議会議長会から意見聴取を進めている。町村議会議長会は人口減少と高齢化で議員のなり手不足が深刻化する実情を説明するとともに、町村議会維持に向けた支援制度の充実などを求めた。総務省行政課は「引き続き意見聴取を進め、議論に反映させたい」としている。

大川村は村長が本格的な検討開始を議会で表明