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Written by 高田泰 116記事

「過疎地消滅」の足音高まる?

人口減少で議会が組織できない自治体の代替組織「町村総会」を総務省が研究へ

総務省は人口減少で地方議会が組織できなくなる事態に備え、議会に代わって有権者が直接、自治体の予算案や施策を審議する「町村総会」の研究に入る。大学の研究者らで構成する有識者会議を7月にも設置し、本格的に町村総会のあり方を検討する。

高知県大川村が町村総会の検討に入ったことを受けた措置で、人口減少が深刻な地域の議会維持策についても意見交換する。しかし、山間部や離島など過疎地域の自治体は既に議員の担い手不足だけでなく、行政のやるべき仕事さえ維持しづらくなってきた。町村総会の議論が始まる現状は過疎地域消滅の足音が高まってきたの裏返しだ。

町村総会は有権者が予算案や条例案を直接審議

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人口減少に頭を抱える元祖限界自治体の高知県大豊町。大川村の騒動は他人事でない(写真=筆者、2015年12月撮影)

地方自治法は町村が条例で議会の代わりに選挙権を有する者の
総会を設置できると規定している。これが町村総会で、住民が自治体の予算案や条例案などを直接審議する仕組みだ。

定足数など開催のルールは町村議会に関する地方自治法の規定が準用されるが、地域の実情に合わせて条例で定めることもできる。類似した直接民主主義の制度はスイスの一部で実施され、州法改正案などに住民が自由に発言し、挙手で表決している。

現在、町村総会を設置している自治体はない。過去には東京・八丈小島の旧宇津木村(現在の八丈町)で1950年代に実施された例があるだけ。旧宇津木村では総会を年に2回ほど村の小学校で開き、定足数が住民の半数以下でも開催されていたという。長野県王滝村では2005年、総会設置を求める条例案が議員提案されたが、否決されている。

総務省が町村総会を検討するのは、全国の過疎地域で議員の担い手不足が深刻化しているからだ。2015年の統一地方選では新潟県粟島浦村など4町村議会議員選挙で、候補者が定数に1人満たなかった。

総務省は有識者会議で町村総会運営上の問題点を洗い出すとともに、夜間、休日議会の普及など町村議会存続に向けた方策も検討する考え。検討結果を基に過疎地域の自治体に対し、適切な助言をするのが狙いだ。

検討の前段階として全国町村議会議長会から意見聴取を進めている。町村議会議長会は人口減少と高齢化で議員のなり手不足が深刻化する実情を説明するとともに、町村議会維持に向けた支援制度の充実などを求めた。総務省行政課は「引き続き意見聴取を進め、議論に反映させたい」としている。

大川村は村長が本格的な検討開始を議会で表明

大川村は高知県北部の嶺北地方にあり、ちょうど四国の中央部に位置する。典型的な過疎の山村で、1950年代に4000人ほどが暮らしていたが、現在は400人ほど。離島を除くと全国で最も人口が少ない村になる。65歳以上の高齢者が全人口に占める割合も40%を超え、2030年には人口300人を割ると予測されている。

村は主に銅を産出する白滝鉱山で栄えたが、1972年に閉山した。1975年には村内を流れる吉野川に早明浦ダムが完成し、村の中心部が水没した。現在は山肌に張り付くように16の集落が点在する。

2003年には近隣自治体と合併協議会の設置を問う住民投票があり、村は賛成多数だったが、近隣自治体の反対多数で実現しなかった。その後も人口減少が進み、議員の担い手不足が深刻化する。2015年の村議選にはどうにか定数の6人が立候補したものの、うち3人は70代後半。引退後は議会の維持が難しい状況だ。

これを受け、和田知士村長はあくまで議会の存続を第1としながら、6月村議会で町村総会設置を検討することを表明、「2年後に迫った村議選で立候補者が足りない事態になったときに備える」と述べた。

村議会の朝倉慧議長も5月、村議会運営委員会に町村総会の必要性などを問う諮問書を提出した。今後、協議を進めて12月20日までに答申する。

大豊町は生活道の維持を住民に委託

人口減少と高齢化が自治体存続に暗い影を落としているのは、大川村だけではない。議会存亡の危機とまでは行かなくても、高知県嶺北地方の他の自治体も財源不足や地域経済の低迷に頭を抱え、大豊町は生活道の維持を住民に頼っている。

人口4000人足らずの大豊町は、高齢者が全人口の半数以上を占める限界自治体に全国で初めてなったことで知られる。85の集落のうち、69が限界集落。高齢化率は既に55%を上回っている。

JR四国の土讃線と高知自動車道が町内を通るものの、交通の便利なことが人口流出に拍車をかけ、2015年国勢調査の人口減少率は全国のワースト30に入った。町の予算難は深刻で、住民が生活道の草刈りなどをして助けている。

嶺北地方は温暖な気候と素朴な人柄で移住希望者には人気の土地だが、定着は難しい。大豊町は第三セクター方式で中四国最大の製材会社を設立したが、就業する若者の確保に苦戦している。大豊町プロジェクト推進室は「地域は徐々に疲弊している。大川村の苦境は他人事ではない」と表情を曇らせた。

総務省が町村総会を検討せざるを得ないのは、過疎地域が人口減少と高齢化で消滅に向かってひた走っているからともいえる。議会や生活道の維持さえ手に負えなくなりつつある過疎地域を救うすべはないのだろうか。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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