日本年金機構から右上に「短縮」と書かれた「黄色い封筒」が届いている方はいないだろうか? 受給資格期間の短縮に伴い、2017年8月から年金受給の対象者が拡大する。新たな受給対象者には特定の年金請求書が配布され、黄色い封筒に入っているのはその書類だ。

保険料納付期間が25年も必要だったものが10年に短縮されたのは歓迎できるが、お役所が申請主義なのは相変わらず。封筒が届いていても手続きをしないと年金を受給することはできないためご注意頂きたい。ここでは、黄色い封筒が届いた人に必要な手続きの方法や、受給開始時期、受給金額について解説していこう。

新しい受給資格対象者の条件

年金受給,黄色い封筒
(画像=Webサイトより)

受給資格期間(=加入期間)とは、保険料を納めた期間と、保険料を免除された期間の合計を指す。2016年の年金法改正により、年金を受け取るのに必要な受給資格期間が25年から10年に短縮された。それにより、加入期間が15年など、従来なら年金を受け取る資格のなかった人が新たに対象者に追加された。

「短縮」の黄色い封筒が届くのは、保険料を払った期間が10年以上25年未満の65歳以上の人だ。対象者は約64万人に上るといわれている。2017年2月から7月にかけて、順次生年月日に応じて郵送される。原則として年齢が高いほど早く来る。該当する人は黄色い封筒が来ていないか確認してみよう。なお、65歳に満たない場合は、65歳になった時点で配布される。

自分が何年分の年金保険料を支払っているのか把握していない人も多いだろう。年金の加入期間や受取見込み額については、日本年金機構のホームページにある「ねんきんネット」で閲覧可能だ。最初の登録は少々面倒だが、以降はログインするだけで詳細が見られる。スマートフォンにも対応している。

封筒が届いた後の手続き方法

黄色い封筒を受け取るだけでは年金は受給できない。必要事項を記入し、添付書類とともに窓口に提出することで、晴れて10月から支払いが始まる。

手続きの流れはこうだ。
(1)「年金請求書」の必要事項に記入(受取口座情報や年金の種類および加入期間等)
(2)添付書類の用意(戸籍、住民票、所得関係書類、雇用保険関係書類等)
(3)年金事務所や「街の年金相談センター」の窓口へ提出
(4)「年金証書・年金決定通知書」送付、年金受け取り開始

制度が改正されて初めての年であるため、窓口は大変混雑することが予想される。相談や手続きを希望する場合はあらかじめ予約されることを強くおすすめする。

予約は「ねんきんダイヤル(0570-05-1165)」から可能だ。ねんきんダイヤルの受付時間は午前8:30から午後5:15まで。月曜のみ午後7:00まで、土曜日は第2週のみ午前9:30から午後4:00までとなっている。予約相談希望日の1ヵ月前から前日まで受け付けているので早めに予約しておきたい。連絡をする時は基礎年金番号の分かる年金手帳や年金証書を忘れずに。

なお、本人が窓口に行くことが難しければ、委任状を作成することで家族などが代理で手続きすることも可能。

受給金額は納付期間で決まる

受給資格期間が短縮されたことにより、「10年間保険料を払っただけで年金がもらえる」という誤解が多い。受給金額は納付期間によって決められるので、長く納めるほど多くもらえる。40年間欠かさず払い続ければ満額の年額約78万円、月額約6万5000円もらえるが、10年しか納付しなかった場合は年額約19万円、月額約1万6,000円にしかならない。あとは厚生年金や個人年金がどれだけあるかにもよるが、給与収入のない老後生活を送るには少々心もとない金額だろう。

できるだけ40年間保険料を払い続けることが原則だが、経済的な理由で納付が難しければ、「保険料免除・納付猶予制度」が利用できる。保険料を納めなくて良い代わりに受取金額が2分の1になるが、やらないよりもはるかにマシだ。経済状態がよくなって年金額を増やしたくなった場合は、保険料を追納することで増額が可能だ。

10年にも満たない場合も、年金を受け取る方法はある。「任意加入制度」だ。60歳以上70歳未満の期間に保険料を納めることによって、受給資格を得ることができる。原則20歳から60歳までの納付期間を延長した格好だ。受給資格を得ることができれば、長生きするほど生涯受け取る金額が大きくなる。

請求漏れや詐欺に注意

公的年金は本人が請求しないともらえないのが原則である。今回の受給資格期間短縮に伴う対象者拡大のケースも同様だ。年金請求の手続きをしなければ支払いはいつまでたっても開始されない。8月を過ぎても請求することはできるが、受け取りの権利を得てから5年経過すると時効で権利を失うので気を付けたいところ。

また、制度改正後に多いのが詐欺の横行だ。日本年金機構を名乗る人物が「年金がもらえるようになる」と口座番号や暗証番号を聞き出そうとしたり、ATMでの操作を指示してきたりした場合は、指示には絶対に従わず警察に通報しよう。

なるべく早い手続きを

最後にスケジュールについておさらいしておこう。
2017年2月~7月 年金請求書配布
2017年2月~ 年金請求手続き受付
2017年8月~ 「年金証書・年金決定通知書」送付
2017年10月~ 年金支給開始(手続きが終わっている人のみ)

支給開始直前の夏ごろには窓口に多くの人が殺到することが予想される。なるべく早く相談予約をして手続きを済ませるようにしよう。(篠田わかな、フリーライター)