ドル円予想レンジ110.00-112.50
「この時計は買いました。昨年ですが、最新のGPSで時差を自動的に調整してくれる時計です」-。これは6/16に記者からの質問「自身は最近何か買い物をしたか」に対する黒田日銀総裁の回答だ。そして「消費の現場に立った時に、2%達成が可能だと感じられたか」との質問には「可能」とし、「長く続いたデフレの元でのデフレマインド払拭がそう容易でないということで時間がかかっている」と答えている。
安倍政権を忖度する円
6/19に国際通貨基金(IMF)は、対日4条協議終了後に声明を公表。“Monetary policy should maintain a sustained accommodative stance(金融政策は持続的な緩和スタンスを維持すべき)と現行施策の支持を示した。
最近の新聞各社世論調査における安倍内閣の支持率低下から“アベノミクス”の陰りを危惧する声が出始めている。しかし、筆者はこれを以て経済最優先で取り組んでいく覚悟を安倍首相は一層強めざるを得なくなった、と推考。なぜなら、「学園問題」が取り沙汰されるなか、東京都議選(6/23告示・7/2投開票)、8月の自民党役員・内閣改造人事を断行する上で、景気の好循環(≒株高円安)維持は、国民・有権者に向けて最大のPRになるからだ。
6/22に政府の6月月例経済報告で、景気の基調判断を引き上げたが、これは自らを追い込んだ格好にも映る。過度な円高進行に対しては、本邦長期運用機関投資家など”オールジャパン“を動員して対峙するのではないか。
イエレンFRB議長を忖度するドル
前号で指摘したが、6/14のFOMC利上げ、そして過去、慎重さを崩さなかったイエレン議長の強気姿勢は、不安の裏返しと邪推している。バランスシートの縮小開始を急ぐ理由は、2018年2月の任期終了前に道筋を付けたいからに違いない。もっともインフレ率の上昇基調を疑う向きも多く、実際、6/23時点でのシカゴFEDウオッチでは年内のFOMC利上げ確率はほぼ見込まれていないのだ。
6月最終週のドル円
翌週7/4米独立記念日を控えて徐々に調整色を強める可能性(過去5年の週足値幅は約2円幅程度) を想定。上値焦点は月足一目雲上限111.405、日足雲上下限111.25-81、6/20-21高値圏111.75-80、5/25-26高値圏111.86-96、5/24高値112.13。超えれば5/17欧米時間下落前の停滞価格圏112.50-55。5/17高値113.12は望外か。下値焦点は200日線110.837、6/19安値110.775、6/16安値110.64。最終拠点として週足一目均衡表雲帯109.95-51留意。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト