ここ数年、日本の資産運用業界では「ロボアドバイザー」と呼ばれる新しいサービスが注目され、大小さまざまな金融機関がこのサービスの開発・提供に乗り出している。

ロボアドバイザーとひと言でいっても、金融機関によって提供する付加価値の内容やテクノロジーの活用度合いなどに大きな差があるが、利用者の目的や状況に合わせてカスタマイズした投資運用サービスを提供するという点では概ね共通している。また、最先端の金融技術や情報技術(IT)を活用して、利便性の高さと低コストを両立させているということも、ロボアドバイザーの特徴のひとつだ。

こうした新しいサービスが広がりつつある背景には、FinTechと呼ばれる金融技術やITの発達とそれらを融合する動きがある。ただもう少し掘り下げて考えてみると、顧客利益を無視したビジネス構造という資産運用業界の歪みが放置されてきたという問題がある。FinTechそのものはこの歪みを解決するためのツールに過ぎない。

資産運用とは、顧客とその資金を預かる投資運用の専門家との間にある信認関係に基づいたサービスだ。本来であれば、私たち資産運用会社やその他金融機関は、顧客の利益を最大化するために専門知識や経験を最大限に発揮することが求められる。

しかし長期にわたって、個人向け金融サービスの世界では、実際にお金を託す個人顧客の存在が無視され、販売会社である金融機関があたかも顧客であるかのように取り扱われ、その利益最大化が最優先されるというおかしなことが続けられてきた。

資産運用会社にとっての顧客は「金融機関」であり「個人」ではない

資産運用業界
(写真=PIXTA)

私が資産運用業界に入ってとき、最初の仕事は年金基金や金融法人等のいわゆる機関投資家向けの商品開発やセールスだった。この世界では、個人投資家向けにあるようなおかしな歪みはなかった。顧客それぞれの目標や状況などに応じてカスタマイズした提案を行い、お互いに合意した投資運用戦略やルールに基づいて投資運用サービスを提供していた。

お金の出し手である機関投資家の利益を最大化するために、資産運用会社や関連する金融機関が同じ方向を向いて付加価値を提供するように全力を尽くすのである。これがごく当たり前の理解だった。

一方、個人向けサービスの世界では、この当たり前が当たり前ではない。資産運用会社にとって顧客とは、自分たちの商品・サービスを売ってくれる金融機関を意味し、実際の資金の出し手である個人ではない。そのため、資産運用会社の営業や商品開発の担当者が最も気にするのは、売り手である販売金融機関の担当者の意見であり、彼らが販売しやすい商品の開発やサポートのための勉強会の開催などに力を注ぐ。

多くの新商品を開発するも「自分で買いたいとは思わなかった」