組織内部によるセクハラや性差別の実態を、シリコンバレーで働く女性たちが次々と暴露している。
シリコンバレーといえば「革命的な発想」や「自由な職場スタイル」の代名詞的存在だが、少なくとも女性にとっての自由や革命にはほど遠い現状だ。しかしセクハラを受けてUberを退社した元女性従業員の暴露がCEOを辞任に追い込むなど、徐々に希望の光が差し始めているようだ。
複数の女性がセクハラや性差別を受けていたUber
シリコンバレーの女性が立ち上がるきっかけとなったのは、Uberの元女性サイト・ライアビリティ・エンジニア(SRE)、スーザン・ファウラー氏によるセクハラ暴露ブログだ。
ファウラー氏は2016年12月にUberを退社後、上司のセクハラを容認していたマネージメントや人事を告発。自分を含め複数の女性がセクハラや性差別を受けていたにも関わらず、「臭いものには蓋をする」的な態度をとり続けた組織への怒りを炸裂させた。
2015年11月に入社した当時、インフラ部門の25%以上は女性だったにも関わらず、転職活動を始めた頃には6%にまで減っていたという。さらにはUber退社日に女性の割合を計算すると、150人のSRE部門の中で女性はわずか3%だったそうだ。
この投稿が世間で予想以上の反響を呼ぶこととなる。「セクハラや性差別の事実を認識していなかった」というトラビス・カラニックCEOが、謝罪と共に徹底した調査に乗りだす意向を示すものの、最終的には株主からの強い要請を受け、辞任という形で責任をとる事態に発展した。
セクハラ行為で設立に関わった会社を無期限休職になったVC
ファウラー氏の勇気に共感した同じくUberの女性エンジニア、エイミー・ルシード氏は、自身のブログに「シリコンバレーの女性従業員の6割がセクハラされた経験がある」 と投稿。
20歳の時Googleのインターンとして勤めていた際、パーティーの席で酔っぱらったマネージャーにつきまとわれた経験を明かすと同時に、セクハラや性差別はシリコンバレーに限らず「組織的な問題」である点を強調した。
6月には6人の女性起業家がメディアを通して、バイナリー・キャピタルのベンチャー・キャピタリスト(VC)兼共同設立者によるセクハラ を暴露し、無期限休職に追いやった。
しかしルシード氏も指摘している通り、これらの例は単に氷山の一角だという。大手IT企業の従業員の7割は男性で、女性の技術者は2割にも満たないというのが現状だ。女性が役員クラスにまでのぼりつめる例は稀である(USATODAY調査 )。
8割が女性という理由で疎外感を経験 9割がセクハラを目撃
シリコンバレーで活躍する女性7人が、同じくシリコンバレーで10年以上の勤務経験のある女性200人を対象に実施した調査では、84%が「好戦的過ぎると非難されたことがある」と回答。男性顔負けの仕事ぶりを、「好戦的、攻撃的」と見なされることは珍しくないようだ。
また59%が「男性社員と同じチャンスに恵まれていない」、47%「男性社員はやらない仕事を任される」と感じた経験があることなども明らかになっている。
88%は「(顧客や同僚が自分ではなく)男性社員に質問する」、87%が「コメントを男性社員に求める」、84%が「男性社員の目を見て話す」など、女性というだけで疎外感を経験しているという。
実際に組織内部でセクハラ行為を目撃したのは90%にもおよび、60%がセクハラの被害届を上司や人事に出している。身の危険を感じた女性は3人に1人という高確率だ。それにも関わらず60%、つまり勇気を出してセクハラを報告した全員が「上層部の対応に満足していない」と答えていることから、多くの企業で女性の立場や権利を軽視する文化が根付いていると言わざるを得ない。
Uberやバイナリーの例を糧に、セクハラやパワハラ、性差別がない環境で女性が活躍できるよう、社会全体の意識改善が求められる。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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