POS(Point Of Sales)といえば在庫・売上管理のためにネットワークを利用して売上情報を収集するシステムだが、欧州で「指の静脈」を使って認証するPOSシステムの共同開発が進んでいる。
開発しているのは北欧を代表する決済ソリューションを提供するノルウェーのデジタル決済会社Netsと、指1本で支払い完了のアプリFingo Payを提供する英国のバイオメトリクス技術会社Sthaler。
両社の決済ソリューション、ネットワークを活かした試みとなりそうだ。
次世代ID認証システムを提供するSthaler
SthalerのWebによると、「Fingo Pay」 は指静脈から作成した3Dマップを基に個人認証キーを生成。ユーザーは店頭のリーダーに指を差し込むだけで、即決済が完了するという手軽さだ。VISAも「新たな決済法」 と絶賛する、革命的なサービスを提供している。
既存のPOSに対応しているため、リテール側にとっては導入の手間もかからない。リテールだけではなく、サービス業や企業でも次世代ID認証システムとして採用されている。
「Fingo Pay」に技術を提供したのは日立で、2015年にはWorldPayと提携して従業員間で試験的に指静脈認証決済を開始 。拠点とする英国では、2017年2月からパブ(飲み屋)に導入されるなど、 一般市場に開放されている。
Nasdaq上場決済企業、Nets
NetsはコペンハーゲンのNasdaqにも 上場している、北欧を代表するデジタル決済会社だ。企業から金融機関、業者まで、広範囲にわたる決済ネットワークやソリューションを提供している。
1960年代からM&Aを繰り返して成長して来たが、近年はデジタル決済を主力としており、コンタクトレス決済やポイント・プログラム用のソリューションなどにも力を入れている。
2015年には即時決済システムを発表し、さらに2017年にはデンマークの銀行と高速決済システムの提携 を結ぶなど、老舗ならではの安定した勢いが感じられる。
バイオメトリクス技術は、すでに自社のモバイル決済「Dankort」 にも採用している。
欧州での調査では約7割がバイオメトリクス決済に関心
Netsのイノベーション・インキュベーター部門責任者、ジェスパー・ポールセン氏は、現代の消費者が特に支払いに関して「簡単で安全、効率的な手段を求めている」とし、指紋認証技術の採用がそうした需要に応えることになると確信している(Finextraより )。
VISAが2016年に欧州で実施した調査 では、回答者1万4000人のうち68%がバイオメトリクス決済に関心を抱いていることが分かった。理由として51%が「決済が早い」、33%「(パスワードやPINの入力より)安全」と回答している。
中でも53%が指紋認証技術を「最も惹かれるバイオメトリクス技術」に挙げており、81%が「最も安全な技術」と見なしている。
指紋認証を含めたバイオメトリクス技術の安全性に関しては、それぞれ脆弱性も指摘されており、対策として複数の認証法を組み合わせるという試みも見かける。
残念ながら今回の共同開発に関する詳細は明らかにされていないが、安全性や利便性を高めるためにも何らかの工夫がなされるものと推測される。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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