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2012年から2013年前半にかけてのドル相場は、主に円に対して大きくドル高が進行しました。これはいわゆる「アベノミクス」の影響が大きく、日本側の材料が主因でした。しかし2013年後半の相場の主役はドルに移ります。アメリカの金融政策に対する思惑が相場を動かしてきましたが、2013年12月、FRB(連邦準備制度理事会)は金融緩和の縮小を決定します。これを受けてドル相場はどう動くのでしょうか。今回はドルを買うタイミングついて、主にアメリカ、ヨーロッパ、日本の状況を比較しながら考えていきます。


アメリカの金融政策動向

2008年のリーマン・ショックによる世界的な金融危機は、その震源地となったアメリカ経済に大きな打撃を与えました。この状況から脱するため、FRBは大規模な量的緩和政策、いわゆるQEを三度にわたって実施します。簡単に解説すると、デフレ回避のために市中に出回るお金の量(マネタリーベース)を増やすという政策です。この政策によりマネタリーベースはリーマンショック前の3倍にまで膨らみました。

この政策により、アメリカの株価は回復し、主要な株価指数であるダウ平均株価はリーマンショック前の水準を上回り過去最高値を更新しました。住宅価格も上昇し、徐々にではあるものの雇用も回復傾向にあります。金融緩和の長期化は過度のインフレを招く恐れがありますから、2013年に入ってからは金融緩和を縮小すべきという声が高まります。5月にこれまで緩和政策を主導してきたFRBのバーナンキ議長が緩和縮小を示唆してからは、その流れが明確になりました。そして冒頭で触れた流れにつながっていきます。2014年1月にはより緩和政策に積極的と言われるイエレン氏が議長に就任しますが、ここから再度緩和に舵を切る可能性は低く、一定のペースで緩和幅を縮小し、それが終了すればいずれ政策金利の引き上げも議論されることになるでしょう。


対ユーロから見た方向性

ヨーロッパでは2009年のギリシャ危機に端を発した欧州危機が、2013年に入り落ち着きを取り戻しました。パニック的な欧州売りは収まりましたが、高成長を続けるドイツなどの国と、依然として回復途上にある南欧諸国との経済状況の違いが鮮明になってきました。そこで2013年11月、ECB(欧州中央銀行)は、デフレ回避のために利下げを断行し、さらなる利下げ、金融緩和を辞さない方針を明確にしています。

基本的に、緩和政策は通貨安を招きます。緩和縮小が始まったアメリカと緩和政策を強化した欧州では、ドル高ユーロ安が進行する可能性が高いでしょう。ただし、利下げ以降こそユーロ安に動いたものの、現状そこまで大きな動きにはなっていません。下落に転じるタイミングを慎重に図りたいところです。


対円から見た方向性

冒頭に触れた通り、日本では2012年末以降のアベノミクス相場により、各国通貨に対して大幅な円安が進行しました。ドルに対しては2013年5月に1ドル100円、12月には105円にまで達しています。4月に日本銀行総裁に就任した黒田氏は、インフレ率を2年で2%にするというターゲットを設定し、そのためにマネタリーベースを2年で2倍にすると宣言しています。この大胆な金融政策に加え、機動的な財政出動、民間の競争力を高める成長戦略の「三本の矢」からなるアベノミクスは、各種数値を見る限り着実に成果を残しています。一方で、2014年4月に実施される消費税率の引き上げが景気に与える影響を懸念する声もあり、安倍政権と日銀にとって正念場となるでしょう。

ドル対ユーロと同様、金融政策の方向が明らかに反対方向を向いていますから、基本的にはドル高円安が進行する可能性が高いでしょう。ただし、2012年来の円安があまりにも急激に進行したため、さらなる上昇余地は限られています。2014年1月現在でも投資家の保有するポジションが大きく円売りに傾いていますから、ここから一時的に円高が進行する可能性もかなりの確率であります。相場に調整はつきもので、2013年も当時の最高値だった103円台に到達した後、93円台まで急激に円高が進行しました。この時、さらなる円安を期待し円売りのポジションをふくらませていた投資家は大きな打撃を受けました。そこまでの円高があるかは分かりませんが、基本的な方向性は円安ですから、下がったところでは淡々と買い増す方針が機能しそうです。


ドル高は確実(?)だが・・・

以上のように、金融緩和の縮小にかじを切ったアメリカのドルが、緩和政策を続けるユーロやドルに対してドル高方向に進行するのは明らかです。ただしそれは大きな流れであって、どんな状況でも一方向に進むことがないのは相場の常です。基本的にはドル高という方向感は常に意識しながらポジションをつくっていくことが大切でしょう。

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