為替

安倍政権が始まって以降、為替レートが円安ドル高の傾向になった事が注視され、株価も上がって肯定的に捉えられています。しかし、米ドルの通貨としての力は継続的に落ち続けており、もはや米ドルと円の関係だけで為替レートを見るのは日本経済の実態を見る上で不都合が多いと言えるでしょう。日本と外国との関係を適切に見るためには実質実効為替レートを使うのが不可欠で、これを使うと、中長期的に日本は円安になり続けている事が分かります。

最初に、この実質実効為替レートを使ったポートフォリオを紹介し、そもそも円安は良いものなのかについて話すという形で議論を進めてまいりましょう。


◉ここ最近の円安?


1985年のプラザ合意以降、米ドルに対して安かった円が(上下運動はあるものの)相対的に高くなり続け、2012年末に安倍政権が発足した後に円安に変化しているというのがメディア等でよく言われる為替レートの見方です。

以下の図1は米ドル/円の長期レートを表しているが、確かに1985年以降急激に円高になり、その後も上下しながら円高になり続け、2012年末以降再び円安に振れているというのは確かに言えるでしょう。

しかし、この見方は本当に正しいのでしょうか。

円1

図1:米ドル/円の長期レート(月次平均)
出典: 時系列統計データ検索サイト(日本銀行) より生成
注1:灰色部は景気後退局面を表す
注2:縦軸は円/米ドル、横軸は月次


◉ 米ドルの通貨としての力は落ちてきている


一般的に為替レートは、大きな為替介入等が無ければ相対的な経済力の違いが反映されていると考えられていますが、日本も特にバブル崩壊後は低成長に見舞われ、米国に対して相対的に経済的な力が強くなりつづけているとは言えません。実際、以下の図2のように、プラザ合意以降、日本の実質経済成長率は米国より低い、若しくはあまり変わらないという状況が続き、相対的な経済力が弱くなりこそすれ、強くなり続けているとは言い難いのです。

円2

図2:実質経済成長率の推移(1980~2013年)(アメリカ, 日本)
出典: 世界経済のネタ帳 より引用

それなのに円安(というかドル安)の傾向になっているのは、米ドルの通貨としての力が弱まっている(米国の相対的な経済力が弱くなっている)からであり、米ドル/円のレートだけを見ていても、世界経済に対する日本経済を正しく見る事は出来ないわけです。

実際、新興国の経済成長が目覚ましく、米国の相対的な経済力が弱まっている(勿論日本も弱まっている)のは事実で、それを反映した為替レートを使う事が重要です。