日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2017年7月に大枠合意したことで、チーズやワイン、パスタなどが安くなるといわれている。イタリアやフランスなど本場のこうした食材が安くなることはワイン愛好家にとっては朗報だろうし、これらは女子に人気のメニューのため「女子会」マーケットも活気づくかもしれない。

米トランプ大統領が交渉離脱を表明したため忘れられた感がある環太平洋パートナーシップ協定(TPP)にかわり、がぜん存在感が増してきたEPAだが、そもそもEPAとは何か。また、どのような影響があるのか、この際、知っておきたい。

EPAとは世界標準語ではなかった?

EPA,関税
(写真=PIXTA)

日本の新聞やテレビではEPAと呼ばれる経済連携協定だが、実は米国も欧州もFTA(Free Trade Agreement)と呼んでおり、世界貿易機関(WTO)の協定の中でもFTAとしている。自由貿易を進める通商政策の一種で、「フリー」というだけあって、すべての取引にかかわる関税をお互いにゼロにしようというのが究極の目的だ。

基本的に2国間で結ぶものだが、2国間の取り決めの中に第三国が入れてほしいと申し出てくる可能性もあり、やがて大きなグループができることになるかもしれない。その規模が最も大きかったのがTPPだった。

これまでWTOは約150の加盟国が参加して貿易を自由化する多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)を2001年から進めてきたが、利害関係が多くてなかなかうまくいかなかった。このため、FTA(EPA)が世界の主流となっている。日本はこのETA(EPA)の相手先として、製造業の「裏庭」となるアジアを重視、2007年に東南アジア諸国連合(ASEAN)を締結した。

今回のEUとの締結はASEANに遅れること10年となったが、同じ先進国どうしで価値観を共有する点も多いことから、世界のお手本となるルールや規制作りが期待されている。たとえば、アメリカではITが産業を主導しているのに対し、日本とEUに共通しているのは自動車業界だ。また環境基準、食品のトレーサビリティーなど価値観を共有できる部分が多い。ただ、EU内の加盟国間の経済発展に格差があるので、要注意ではある。

関税がなくなるとどんなメリットがあるのか