マスターカードがサンフランシスコのAI(人工知能)企業Brighterion の買収を発表した。

Brighterion は自社が提供する「スマート・エージェント技術」を、現時点において「世界で唯一、個人化・順応性・自己学習の容量が限定されていない機械学習技術」とうたっている 。この技術を自社のAIシステムに組み込むことでサイバーセキュリティー強化を狙う。買収価格は今のところ明らかにされていない。

セキュリティー部門社長「次世代決済システムを構築する時期」

「サイバー攻撃による潜在的損失が530億ドル (約 5兆9413億円)におよぶ」リスクがロイズ・オブ・ロンドンに指摘するなど、サイバー攻撃が世界中で猛威をふるう中、AI技術を利用したセキュリティー対策が注目を浴びている。「頭脳には頭脳で対抗する」との発想だ。

マスターカードは2016年からセールス部門のスタッフ・トレーニングなどにAI技術を採用しているほか(CNBCより )、セキュリティー対策の一環としても積極的にAIシステムの構築に取り組んできた。

今回のBrighterion買収はサイバーセキュリティーを強化することで、組織と顧客の安全を守る意図がある。

エンタープライズ・リスクおよびセキュリティー部門のアジェイ・バラ社長は 、ますます加速するデジタル化にともない、「マスターカードの決済システムを次世代向けに設計しなおす時期が訪れた」と自社サイトでコメント。

自社で既に採用しているAI技術とBrighterion の知識と技術の融合が、顧客満足度を向上させる上で大きく貢献するとの期待を表明した。

「スマート・エージェント技術」が高評価を受けるBrighterion

2000年に設立されたBrighterion は、世界最高水準のAIおよび機械学習技術を利用したソリューションの先駆けとして、セキュリティ関連商品から、サンクション・スクリーニングやKYCソリューションなどのコンプライアンス関連商品まで、幅広いAI領域をカバーしている。

通常のAI技術は、あらかじめ定義された規則や起こり得る可能性のあるシナリオを予期するためにプログラミングされているが、スマート・エージェント技術 はシステム上の各エンティティ(データ処理の際、モデル化された現実世界の対象物・概念) の1対1のプロファイリングを行う。

また常にリアルタイムで更新されるため、最適な学習環境を備えた透明性の高い技術だといえる。

Brighterionはこの技術で、「フロード・イノベーション・ワールド・シリーズ・アワード」「ベスト・アナリカル・ソリューション・アワード」など、様々な賞を受賞した。

コンピューター科学の権威でもある設立者兼CEOのアクリ・アドジャオウテ博士 は、最先端の顧客認証および承認システムの開発に向け、マスターカードとはすでに過去数年にわたり提携関係を結んできた実績を基盤に、「産業をリードする総体的かつ円滑なセキュリティー経験を提供したい」と意気込みを語った。

決済産業とAIセキュリティー産業のトップが知識と技術を提携しあうことで、消費者の安全性が著しく向上すると期待しよう。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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