あなたは「読み手型」or「聞き手型」?

コミュニケーション,伝え方,基本
(写真=PIXTA)

「コミュニケーションをとることが苦手」「ちゃんと伝えたはずなのに、言った言わないでモメることがある」という悩みをもつ人に、質問です。

あなたは「読み手型(=読んで理解する人)」でしょうか? それとも「聞き手型(=聞いて理解する人)」でしょうか?

何かを確認するとき、文字を読むほうが理解しやすいなら、あなたは「読み手型」、聞いた方が理解しやすいのなら、あなたは「聞き手型」です。(本書117ページより)

大企業でコンサルタント・マネージャーやアナリストを務め、現在は武蔵野大学でビジネス・コミュニケーションを教える金子敦子さんは、著書 『「その話、聞いてないよ」と言われない伝え方』 にこう記しています。

私たちは生まれてから、毎日のように言葉のシャワーをあび、口頭のコミュニケーション(聞く・話す)を習得します。また、小学校にあがる前後に文章によるコミュニケーション(読み・書き)も行なうようになり、口頭と文章の両方のコミュニケーション手段を使うことができるようになります。

といっても、その両方に秀でている人は少なく、誰もが得意不得意をもっているものなのだとか。どうやらそこに、コミュニケーションに対する不安を減らすヒントがありそうです。金子さんの著書、第4章「『伝える手段』を選ぶ」から見てみることにしましょう。

相手のタイプがわかれば、コミュニケーションは円滑になる

私たちは日常的に、さまざまな方法でコミュニケーションを行なっています。とくにビジネスシーンでは、会議や打ち合わせ、電話といった「口頭」のコミュニケーションと、文書やメールなどの「文章」によるコミュニケーションが中心的な役割を果たしています。

この2つのうち、どちらかというと、文章よりも「聞く・話す」といった口頭でのコミュニケーションに時間を割いている人が多いのではないでしょうか。しかし世の中には、文字による情報のほうが理解しやすい「読み手型」の人も存在することを忘れてはいけません。

たとえば、上司に報告をしたとき「話だとよくわからないから、紙にまとめてもらえないかな?」といわれたとしたら、それはあなたの伝え方が悪いのではなく、相手が「読み手型」の人の可能性があります。

相手にうまく伝わらないと、「なぜわかってもらえないんだろう」と落ち込んだり、「この人は自分の話しを聞いてくれない」と決めつけてしまいがちです。しかし、もしかしたら相手の得意不得意を意識して伝達手段を変えてみれば、簡単に解決できるかもしれません。

たとえば、「読み手型」には多くの情報を口頭で伝えないようにする、「聞き手型」の人に長文のレポートを提出するのは控えるなど。このように「口頭」と「文書」とのバランスを意識して伝達手段を選べば、相手にメッセージを受け取ってもらえる可能性が高まります。

ではさらに、伝えるための代表的な手段の、それぞれのメリット・デメリットあげてみます。

「伝える手段」、どれを選ぶ?

やっぱり「対面のコミュニケーション」が一番伝わる

慣れた相手との慣れた仕事であれば、メールや電話でも十分に伝わります。しかし、今までと違う新しいことをはじめたり、問題解決を目指すのであれば、対面のコミュニケーションが欠かせません。

対面で話すのはときに勇気がいることですが、真剣な表情や落ち着いた声の調子など、非言語コミュニケーションを駆使して気持ちを伝えることができます。さらに相手の反応に応じて臨機応変に調整でき、「それはいいね」「違う気がする」などのフィードバックをその場でもらいながら、考えを深めていくことも可能です。シンプルに相手と向き合うことができる点もメリットといえるでしょう。

デメリットとしては、直接会って話すのは、時間的にも体力的にも、気持ちの面でも、電話やメールより負担が大きくなること。もし、お互いに疲れていたり、感情が高ぶっていたりすると、コントロールがきかずにケンカになってしまうこともありえます。そんなときは、お互いに少し距離をとり、落ち着くのを待ってみるのもひとつの方法だと金子さんは述べています。

「電話」のよさは、即時性と双方性

電話のよいところは、相手の反応がすぐにわかることです。訪問するよりも手短に気軽にやりとりができますし、メールで書きにくいことも伝えやすくなります。

また、相手にメッセージが届いているかどうかが、その場で確認できるのも電話のメリットです。メールのように、気づかないうちに迷惑フォルダに入っていたり、システムの不具合で届かないということはありません。「遅れます」というような急ぎの連絡はメールではなく、電話をつかうのが賢明です。

確定情報、重要な情報は「書面」で伝える

口頭のコミュニケーションは重要ですが、書面がそろうことで次の段階に進む仕事もたくさんあります。たとえば「この仕事を50万円で受注する」というような金銭が関係する内容には、正式な書類や請求書でのやりとりが必要です。また、大人数が関わるイベントの案内などは、口頭で伝えていたとしても、あらためて書面での案内が必要です。

また、会議や打ち合わせでは「議題表(アジェンダ)」をつかって議題を明確にして進行をすることで、議論の迷走を防ぐことができます。さらに、決まった内容を「いつ、誰が、何を、どのようにする」のかを、議事録にしておけば、「じゃあ、そういうことで」となんとなくまとまったものの、その後は具体的にものごとが進まない……ということを防止できます。

「微妙なニュアンス」はメールでは伝わらない

メールは便利なものですが、それだけに頼らないようにすることが大切です。

メールで伝えられるのは言語情報だけです。書き言葉だけで微妙なニュアンスを伝えるのは、それほど簡単なことではありませんし、転送されて困るような「デリケート」な内容には向きません。

また、ちょっとした意見を伝えるとき、メールは口頭よりも厳しい印象を与えます(絵文字や顔文字はビジネスメールには使えませんね)。また、宛先の入力間違えや編集途中で送信ボタンを押してしまうなど、ミスのリスクもあります。微妙なことや込み入った意見を伝える場合は、メールよりも対面でのコミュニケーションを選択したほうが賢明です。

また、コミュニケーションは人と人との関わり合いなので、メールだけでの関わりは、対面に比べるとどうしても印象が薄くなってしまいます。会ったこともない相手へのメールは、「スルー」されてもしかたがないと思っていたほうがいいかもしれません。

コミュニケーションは1つの方法だけに偏らないことが大事

相手が「口頭」と「文章」のどちらを得意としているのか、すぐにはわかりませんし、3人以上の打ち合わせでは、「聞き手型」と「読み手型」が混在することもあるでしょう。また、伝達手段の方法にもメリット、デメリットがあることがわかりました。

相手に「伝える」必要があるとき、以上のことを意識してみることで、今までとは違ったコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。

本書のなかには、さらに「適切なコミュニケーションの距離の取り方」や「簡潔、明瞭に伝えるコツ」など、「伝えたつもり」で失敗しないためのノウハウが満載です。その内容を実践すれば、不安ばかりだった「一方通行」のコミュニケーションが少し楽しいものに変わるかもしれません。

(提供: 日本実業出版社 )

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