2017年第2四半期のFinTech企業へのVC投資が総額52億ドル(約5737.6億円)だったことが、CBインサイツの調査から分かった。第1四半期から600万ドル(約6.6億円)増、前年同期から400万ドル(約4.4億円)増という結果だ。
ソフトバンクによる14億ドル(約1544.7億円)の大型投資に押し上げられ、アジア圏のVC FinTech投資は前年同期比88%増の27億ドル(約2979.1億円)に。特にシードやシリーズAなど、初期段階への投資が5期連続で成長している。
シリーズA、後期段階への投資が成長 シードは縮小傾向
140億ドル(約1.5兆円)前後を記録した15年、16年 と比較すると穏やかな滑り出しとなった今年のFinTech投資だが、第2四半期はその勢いを取り戻し、4半期では史上最高記録となる52億ドルを叩き出した。
国際規模では相変わらずシードへの投資の割合が最も高く30%を超えているが 、徐々に縮小傾向にある。代わって第2四半期は、大型取引の相次いだシリーズAへの投資の割合が27%(前期比6ポイント増)に成長。総額7億ドル(約772.3億円/前期比43%増)と、これも最高記録となった。
下降気味だった後期段階への投資も回復基調にあり、中央値は3400万ドル(約37.5億円/前期比66%増)と5期中最高だ。
アジア・トップ10投資を中国とインドが独占
第2四半期に最も飛躍的な伸びを見せたのは、アジアFinTech へのVC投資だ。地域中、唯一初期段階への投資が急激に成長しているのも特徴だ。前期から350万ドル(約3.8億円)増え、 500万ドル(約5.5億円)に達している。
アジア・トップ10投資のうち、P2Pサイトを運営するTuandaiwang (??网)を筆頭に中国・香港のFinTech企業が7割を占めている 点に注目したい。残り3社はソフトバンクが14億ドルを投じたワン97コミュニケーションズを筆頭に、インドのFinTech企業だ。
両国共にアジアFinTechの未来を担う存在とされているが、前年同期比からの伸びを比較すると、中国FinTechへの投資が3億ドル(約330.9億円)減となる10億ドル(約1103.1億円)で若干低迷しているのに対し、インドは13.4億ドル(約1478.1億円)増えて14.9億ドル(約 1643.6億円)とほぼ10倍に拡大している。
過去1年の成長率だけで判断すると、インドのFinTech VCに勝るライバルは見当たらない。
米FinTechでは55億円級の大型VC投資が12件
第2四半期の米国へのVC FinTech投資は、総額19億ドル(約2095.1億円)、96件。前年同期から投資件数は18件減となったものの、総額は3億ドル(約 330.8億円)増。
合計12件もの5000万ドル(約55.1億円)以上の大型投資が相次いだ結果かと思われる。マスターカードやPayPalの設立者、ピーター・ティール氏などから総額3億ドルを調達した 自動決済ソリューション・スタートアップAvidXchange (bizjournalsより)、シリーズBで1.6億ドル (約176.4億円)を獲得した医療保険スタートアップBright Health (ビジネスワイヤーより)。ほかにも株取引アプリのロビンフッドやブロックチェーンのR3などが、それぞれ1億ドル(約110.2億円)以上を調達した。
最も活発にFinTech投資を行っているのはニュー・エンタープライズ・アソシエーツ、コースラ・ベンチャーズ、アンドリーセン・ホロウィッツなどのVC企業だが、Googleやアメリカン・エキスプレスのVC部門も負けてはいない。
このままのペースを維持すれば、前年比11%増の成長率となりそうだ。
Brexitで急ブレーキのかかったUKを筆頭に失速する欧州
欧州は総額4.98億ドル(約549.1億円)、56件。 7億ドル(約771.6億円)に届きそうだった前四半期の勢いは感じられない。米国同様、ピークは2015年だったという印象だ。
長らく欧州FinTechをリードして来たUKへの投資は、前四半期から52%減。アトムバンクやファンディング・サークルが1億ドルを超える調達に成功した第1四半期、Brexitの逆風を乗り越えたかのように思えたが、Brexit決定直後の前年同期と同じ水準にまで逆行している。
欧州ではシードおよびシリーズAの人気が陰りを見せ、投資件数は44%、投資総額は37%減っている。また企業によるVC系スタートアップへの投資も、29%(前期比4ポイント減)にまで落ちこんだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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