将来の老後資産を自分で準備する個人型確定拠出年金(iDeCo)。2017年1月の法改正によって加入者の範囲が拡大し、基本的に60歳未満の全ての公的年金被保険者が加入できるようになった。このことを踏まえ、今回は、iDeCoの受取開始年齢にスポットをあてて解説する。

「何歳から受け取ることができるのか」「受け取る年齢によってメリットやデメリットはあるのか」など、具体的な年齢を例にあげながらみていくことにしよう。

(写真=stoatphoto/Shutterstock.com)
(写真=stoatphoto/Shutterstock.com)

iDeCoの給付における年齢のルールとは

iDeCoで積み立てた年金資産を老齢給付金(分割(年金)または一括(一時金))として受け取れる年齢は、原則60歳からと規定されている。iDeCoはあくまで老後の資金形成のための制度であるため、一定の年齢に達するまで引き出すことができないのが特徴だ。一方で、70歳までには老齢給付金を受け取らなければならないと規定されている。

老齢給付金を60歳から受け取るためには、10年以上の通算加入者等期間*が条件となる。つまり、60歳から受け取るためには、50歳までにiDeCoに加入していなければならない。
*通算加入者等期間
通算加入者等期間とは、次に掲げる期間を合算した期間のうち、60歳になられるまでの期間のことをいいます。
・ 企業型確定拠出年金の加入者期間および運用指図者期間
・ 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者期間および運用指図者期間
・ 他の企業年金制度等からの資産移換があった場合は、資産の移換の対象となった期間

これに対し、通算加入者等期間が10年に満たない場合には、加入自体は可能だが、通算加入者等期間の長さによって受取開始年齢が変わってくる。例えば、51歳で加入した場合には受給可能年齢は61歳以降、57歳で加入した場合には64歳以降と、加入時期が遅くなればなるほど、受取開始の年齢が上がっていくのだ。

受取年齢別のメリット・デメリット

前述の通り、通算加入者等期間が10年以上あれば、iDeCoは60歳から70歳までの好きな時期から分割(年金)または一括(一時金)で受け取ることができる。では、いつから受取開始するのが良いのだろうか。ここでは、2つのケースに分けて考えてみよう。

60歳で受け取りを開始する場合
まず、受給可能年齢である60歳に達してすぐ受け取りを開始する場合だ。メリットは、長年積み立てた老後資産をいち早く使えるようになることだ。ライフプランに合わせた使い方を早い段階から開始できるので、使い道の自由度がより高いといえる。

また、60歳で定年退職した場合、原則65歳からとなる公的年金受給までの空白の5年間を、iDeCoで積み立てた老齢給付金で補うことが可能だ。

デメリットは、受取開始が早い分だけ、運用できる期間が短くなってしまうことだ。しかもiDeCoは運用で得た運用益が非課税であるため、税制の観点からみれば、運用益非課税のメリットが早い段階で失われてしまうという側面もある。

69歳で受け取りを開始する場合
それでは、受取開始年齢を70歳ギリギリに設定した場合はどうだろうか。メリットは、60歳での受取開始よりも長く(9~10年)資産運用ができるため、運用益非課税の恩恵を長期間受けることができる点にある。この場合は、60歳を過ぎても継続して資産運用できるため、運用益もその分多くなる可能性がある。もちろん、運用に失敗して資金を減らしてしまう可能性もあるのだが。

デメリットは、受取時期が高齢になるにつれて、自分の寿命や健康状態を考慮にいれる必要がある点だ。せっかく老後のために貯めた資金を、受取時期を遅らせたばかりに、思ったように使えなくなってしまうのでは本末転倒だ。受け取り前に本人が死亡した場合は「死亡一時金」として遺族が受け取ることはできるものの、みなし相続財産として取扱われ課税対象になってしまうというマイナス面もある。
また、受け取りを開始するまで(60~68歳)の期間も口座管理手数料がかかる点は考慮する必要があるだろう。

自分のライフプランに合わせて受取時期を決めよう

iDeCoでは、分割(年金)または一括(一時金)による受取開始年齢に幅をもたせているため、いつから受け取りを開始するかは、ある程度自分で決めることができる。何歳で受け取るのがベストなのかは、人によってそれぞれ異なる。

自分の家族構成、財産、老後のライフプラン等と照らし合わせ、自分に合った無理のない範囲で受取時期を決めるようにしたい。

(提供: 確定拠出年金スタートクラブ

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