「仕事が終わらない」と嘆いている方の中には、「仕事が早い人とはそもそも能力的に大きな差がある」と決めつけている方も多いのではないでしょうか。しかし、残業もなく、仕事で成果を出せる人は、実は、手帳とスケジューリングのノウハウをうまく使っているのです。まず、なぜあなたは時間に追い立てられるのか、その部分をしっかりと理解していきましょう。

(本記事は、伊庭 正康氏の著書『 会社では教えてもらえない 仕事が速い人の手帳・メモのキホン 』すばる舎(2016年11月22日)の中から一部を抜粋・編集しています)

仕事を早くする≠目の前の仕事をやみくもにこなす

手帳,仕事術
(画像=Webサイトより)

先日、私の20代の知り合いが、メンタル疾患を発症し、退職を余儀なくされました。本人によると、「残業による過労」がきっかけだと言います。でも、好んで残業をしていたはずはなく、そこにはプレッシャーもあったはずです。ましてや、若手の彼には、自分で時間をコントロールできない業務が多かったことも災いしたのでしょう。

それでも、彼は期待に応えようと頑張りました。
しかし、「やってもやっても仕事が終わらない」日々が続きます。会社は残業削減の方針。短時間で成果を出すことを厳しく求められていました。いよいよ、疲れ果てたなかで、彼はこんなことを思い始めます。

「自分には能力がないのでは……」と。

その3ヶ月後のことでした。メンタル疾患にかかり、会社を去ったのです。私はそれが残念でなりません。たとえ若手であろうと、ちょっとしたことで、時間なんて簡単にコントロールできるからです。特別な能力やスキルは不要。「正しい予定の立て方」を知っているかどうかだけのことなのです。

たとえば、短時間で成果を出している人は手帳を見ると面白いことがわかります。この本の「はじめに」でも書きましたが、見るべきは、1ヶ月後の部分。そこには、すでにいくつもの予定が書かれているはずです。彼らは「予定は自らが作るもの」と考えているので、先々の予定までどんどん埋めているのです。

一方で、いつも遅くまで仕事をしている人の手帳を見てください。
見るのは、同じく1ヶ月後。そこには、ポツン、ポツン、といくつかの予定が書かれているだけでしょう。彼らは「予定は入ってくるもの」だと考えているので、忙しいといっても、実は目の前の仕事に追われているだけなのです。

メンタル疾患で退職を余儀なくされた彼は、残念ながら後者でした。でも、同じような人は少なくありません。仕事を速くするというのは、目の前の業務をやみくもにこなすことではないのです。

手帳は、デジタル・アナログのいいとこどりが基本

手帳の話題になると必ず出るのが、これ。デジタル派か、それともアナログ派か。しかし、この議論にはすでに答えが出ています。

共有する必要がないならアナログを、共有する必要があるならデジタルが正解だと。ここで言いたいのは、共有する必要がないなら、ムリにデジタルにしなくてもいいいということ。一見すると時代遅れのように感じますが、スケジュール管理だけを考えた場合には、アナログの方が便利だという声が圧倒的に多いのです。

なかには、アナログをメインの手帳として使い、スケジュールを他の人と共有する必要があるために、デジタルには必要最小限の文字で転記するという二刀流も増えているくらいです。

これは、両方を使ってみると分かるのですが、「書く点」においては、圧倒的にアナログの方がラクだし速い。しかも、欄外に書けるといった利点も見逃せません。具体的なシーンで考えてみるとわかりやすくなります。

お客様との商談のシーンで考えてみましょう。

お客様「まだ、確実ではないけど、ひょっとしたら23日の13時か、24日の15時なら時間がとれるかもしれないかな……」
営業「では、仮押さえしておきましょうか。いつまでに分かりますか?」
お客様「明日の朝には分かるので連絡しますね」
営業「かしこまりました!」

営業マンの手帳には、「かしこまりました」と言うと同時に、(仮)とつけ加えた予定が書き添えられます。デジタルでは、会話をしながらここまで感覚的に、かつ迅速には書けないものです。このように、紙の手帳は曖昧な処理が得意です。

とはいえ、グーグルカレンダー等のデジタル手帳を使わざるを得ない方もいるでしょう。デジタルのスケジュールで仮の予定を入れる場合は、「色で管理」するのがオススメです。

たとえばグーグルカレンダーでしたら、仮の予定を記入する際は、ちょっと薄い「ラベンダー色」といったようにしておくと、「仮の予定」であることは確認しやすくなります(「仮」と書かなくても分かる)。

また、ちょっとしたコメントは「メモを追加」という箇所がありますので、そちらに書いておくといいでしょう(ちょっと面倒ですけどね)。もはや、「デジタル」か「アナログか」ではなく、目的によってデジタルとアナログを使い分けるのが賢い選択。このいいとこどりが今流。ゆえに共有の必要がなければ、アナログの手帳がオススメです。

スケジュール管理にとって「タイムスパン」と「キャパシティ」が重要

先日、私の息子(大学生)が、相談に来ました。

「予定が増えたため、手帳がグチャグチャになってきた……。大人はどうしているのか?」と。

彼の手帳を見ると、マンスリーページで管理していたのです。
グチャグチャになってきたとはいえ、彼の1日の予定は4~5件程度。ウィークリーページに書き換えると、まだまだ余裕のある状態なのですが、彼の手帳はキチキチで、余裕なんてどこにもない状態になっていたのです。

こうならないためにも、1日の予定が3件以上あるなら、毎週の予定を俯瞰できるウィークリータイプの手帳を使ってほしいのです。
ウィークリーページで確認をすると、キチキチだと思っていたスケジュールであっても、まだ余裕があることがわかります。

私はキチキチの手帳を使っていると、せっかくのチャンスを逃すことになる、と考えます。「もうこれ以上はムリ」と無意識に思い込んでしまうため、新しいことに挑戦しようと思わなくなるからです。1日数件の予定が入っても、まだまだたくさんの余裕が見える手帳を選ぶことがベストなのです。

結論です。
1日に3件以上の予定を書き込む人は、マンスリータイプを捨て、ウィークリータイプを使いましょう。手帳のキャパシティが増えれば、あなた自身のキャパシティも増やせます。

伊庭 正康
1991年リクルートグループ入社。営業としては致命的となる人見知りを4万件を超える訪問活動を通じ克服。リクルート社においても珍しいとされるプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞、累計表彰回数は40回以上。その後、営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、(株)らしさラボを設立。営業リーダー、営業マンのパフォーマンスを飛躍的に向上させるオリジナルの手法(研修+コーチング)がリーディングカンパニーの目に留まり、年間260回の営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演を行っている。リピート率は91%。また、ストレスコーピングコーチとして、ビジネスパーソンのメンタルタフネス強化の支援も行っている。近著には、『苦手な人がいなくなる(中経出版)』『強いチームをつくる!リーダーの心得(明日香出版社)』など多数。その活動は、日本経済新聞、日経ビジネス、など多数のメディアでも紹介される。