夏休みはマネー本を読むには最高の季節。株式市場には参加者が少なく夏枯れとなることが多く、理論武装するには最高のタイミングだ。デジタル配信本を旅先にてダブレットで読んでいる人も多いだろう。ここではデジタル化をさらに一歩すすめて、「名プレゼンテーションを動画で見る」と題して、金融市場の勉強になるだけでなく、英語の勉強にもなり、感動も味わえる動画をご紹介していこう。

TEDには第一線で活躍する人の名講演があふれている

(写真= Mr.Whiskey/Shutterstock.com)
(写真= Mr.Whiskey/Shutterstock.com)

TEDトークを利用したことがあるだろうか? TEDは様々な分野の第一線で活躍する人をスピーカーとして講演会を開催するニューヨークのNPO法人だ。「TEDトーク(https://www.ted.com/)」のサイトでは2500を超えるプレゼンテーションのアーカイブが無料で見られる。

もちろんタブレットやスマホのアプリでも閲覧可能。英語に自信が無くてもご心配なく。日本語の字幕がついたものがたくさんある。

金融関係のプレゼンを探すなら、キーワードに「money」「economics」「 investment」などを入力し探せばいい。人気があるものは「Most viewed」、最新のものは「Newest」でソート出来る。日本語字幕があるもののみを探すなら、言語を日本語に指定すればいい。日本語字幕なしの動画もあるので、最初に英語で見てオリジナルのプレゼンの雰囲気をつかみ、後から字幕付きで見るという方法をおすすめする。

必ず見ておきたい8の名講演

(1)『私たちが資本主義を見直すべき理由』ーポール・チューダー・ジョーンズ II

金融界レジェンドのプレゼンテーションが無料で聞けるなんて素晴らしい時代になった。ポール・チューダー・ジョーンズは1954年生まれの伝説のトレーダー。綿花などの商品取引で天才的なトレードで名と財を成し、1980年にマクロ系ヘッジファンドのチューダー・ファンドを設立した。ヘッジファンド界のレジェンドの一人だ。 アメリカン・サクセス・ストーリーを実現したポールが、今のアメリカ資本主義を警鐘した15年のスピーチだ。

(2)『マイケル・ノートン: 幸せを買う方法』ーマイケル・ノートン

マイケル・ノートンはハーバード・ビジネススクールで経営管理論を教える教授だ。『「幸せをお金で買う」5つの授業』という著書がある。 マイケルは「幸せは金で買える」と言い切る。ただし、それは使い方によるというのが彼の主張だ。宝くじが当たったりすると人生は不幸になるということを紹介し、社会的な幸せの買い方つまりお金の使い方を語る。今までの閲覧数は350万ビューで「money」関連動画として世界で最も見られている11年のプレゼンテーションだ。

(3)『富を贈ることが最高の喜び』ービル&メリンダ・ゲイツ

マイクロソフト創業者、世界一の資産家のビル・ゲイツ。先日も5070億円を夫妻が創設した慈善団体である「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」に今世紀最大の寄付をしたことで話題になった。 ビジネスについてビルが語るのでなく、夫妻がインタビュー形式で、寄付活動、結婚生活、家族についてなどを語る珍しい動画だ。 マイケル・ノートンの話でもそうだが、米国では成功者が富を還元する仕組みが出来ている。そこに幸せを見いだしている。TEDで300万ビューを超える人気動画だ。富はなくとも、彼らの思想は見習いたい。

(4)『ウォールストリートを制した天才数学者』ージム・シモンズ


ジム・シモンズは日本での知名度はそれほど高くないかも知れない。1938年生まれ。MIT(マサチューセッツ工科大学)で数学を専攻、その後、ハーバード、MITという米国を代表するエリート校で数学を教え、天才数学者と言われた。数学を引っ提げて投資の世界に入り、今のシステム投資、クオンツ投資の原型を築いたレジェンドの一人だ。 1988年、ヘッジファンドであるルネサンス・テクノロジーズ設立しメダリオン・ファンドを運営した。そのパフォーマンスは伝説的でもある。 彼の投資哲学、投資モデル、なぜ成功したかなどをTEDのCEOのインタビューで語られる。

(5)『ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか』ードン・タブスコット


フィンテックは海外の状況が日本を一回りリードしている。そういった新テクノロジーや新時代のリーダーやベンチャー企業のCEOなどのプレゼンに簡単に参加できるのもTEDのいいところだ。

ドン・タブスコットは、デジタル・ネットワークが経済・社会・文化を大きく変えると主張、『デジタル・エコノミー』、『bウェブ革命』などの著書をたくさんもつ論者だ。仮想通貨を支えるブロックチェーン技術による信用構築をわかりやすく解説する。このプレゼン以外にもフィンテック関連では仮想通貨、ビットコイン、海外送金などのアーカイブも多いので、日本のビジネス本を読む前に是非一度講演を聴いてみることを奨める。

(6)『デイビッド・ローズの「VCへのプレゼン術」』ーデイビッド・ローズ


将来、起業を考えているのなら、このプレゼンテーションは必見だ。起業し上場をめざすのなら、自己資金だけでビジネスを拡大することは難しい。ベンチャーキャピタルの出資が必要だ。出資を得るためには、ビジネスモデルとプレゼンで投資家を説得する道は避けて通ることは出来ない。

デイビッド・ローズはアントン・プレナーとしてたくさんの会社のスタートアップにかかわり、エンジェルとしてベンチャーキャピタルに出資する側としても活躍した。VCのプレゼンの前に知っておくべき10のコツを教えてくれる。

(7)『サステナビリティ投資の論理』ークリス・マクネット


世界最大の年金基金である日本のGPIFが、ESG投資を1兆円規模で始めると報じられた。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業に投資する運用だ。地球環境や人権問題など長期的な視点で企業の持続的成長(サステナブル)を促すための投資で、世界的な年金資金での導入が進んでいる。

クリス・マクネットは実際に世界の機関投資家にESG投資を奨めている。機関投資家や企業がESG投資を重視する必要について語っている。ESGの考え方を把握しておくことは今後の金融市場やビジネスを考える上でとても大事だろう。

(8)『 How to live before you die 』ースティーブ・ジョブス

今までは日本語の字幕があるものを紹介してきたが、字幕はないが是非紹介したい動画がある。スティーブ・ジョブスの感動の講演だ。TEDにスティーブのスピーチはこの1本だけだ。05年にスタンフォード大学の卒業式で式辞として送られたもの。言うまでもないだろうが、スティーブはアップルの創業者で11年に56歳の若さで亡くなった。

スティーブの話には、自分の人生や行動がインスパイアされるようなヒントがたくさんちりばめられている。このとき、すでにスティーブのガンは発見されていた。そんな時期に、人生、愛、死についてなどのテーマを語った。

「まずは自分の人生の満足のために時間とエネルギーを使おう」

どうしても日本語も見たいのなら、YouTubeなどにはこの名スピーチに字幕を付けた動画も探すことが出来るはず。彼がいなかったら、iPhoneもタブレットもなかったかもしれない。ありがとうスティーブ、ありがとうTED。(ZUU online編集部)