三井住友フィナンシャルグループは、2014年3月期の連結決算において純利益が前期比の5%増の8353億円と2期連続で過去最高益を更新しました。その主な要因は、直近の景気回復に伴い、取引先の貸し倒れに備えた積立の引当金の戻り益が膨らんだことや、傘下のSMBC日興証券が株高の影響を受けて株式売買の委託手数料が増加したこと等があります。

三井住友銀行単体の実質業務純益については、8124億円で前期とほぼ横ばいの結果でした。ここ数年のデフレの中にあって、国内の資金需要は盛り上がらず、銀行の資金利益は近年ずっと低迷状態が続いてきました。本稿では、近年のメガバンクを取り巻く課題に触れつつ、純粋な国内業務のみならず海外業務でも利益を上げるために、三井住友銀行が構築しているビジネス「アジア・セントリック」に迫ります。


メガバンクの構造的課題

まずは、ここ数年の銀行を取り巻く環境についてご説明します。銀行の収益の中心は「貸出業務」です。預貸業務での収益の中心となる「資金利益」が業務純益全体の約60%を占める状況はここ数年で大きく変わっていません。

近年の銀行の貸出金残高の状況について見てみましょう。日本銀行の「貸出・資金吸収動向等」によると、国内銀行の貸出金残高は、1996年のピーク時(約530兆円)に比べて、近年では20数%の縮小状況にあります。これは国内企業の経済活動の低迷を背景に、企業の資金需要低下が貸出金縮小につながっているためであると考えられます。今後も国内で貸出金の大幅な増加を見込むことは難しい状況にあることは、銀行が抱える課題の一つです。

もう1点、日本の銀行が国債の運用に偏重する体質から抜け出せないことも課題としてあげられます。日銀統計によると、国内の民間銀行の国債保有残高は過去15年間で約5倍にまで拡大しています。2013年4月より日銀より始められた量的・質的金融緩和のもとで、国内の銀行は長らく続けてきた国債のトレーディング益に頼る経営からの変化が求められています。

こうした中で銀行の新しい動きが見られています。例えば、2013年6月に安部政権が打ち出した成長戦略を先取りする形で、メガバンクを中心にエネルギーや農業、医療、介護といった分野での資金需要策が強化されています。地方銀行も巻き込みながら中堅・中小企業の支援ファンドの組成などにも積極的に取り組まれています。また、国内融資の低迷や利ざや縮小を補うべく海外融資の拡大などの動きも出てきています。