成長分野へのリスクマネーの投資

近年の環境変化を受け、三井住友銀行が進める特徴的な取り組みについてご説明します。まず、国内業務においては、先述の通り安部政権による日本再興計画を受けて、特定成長分野に対する金融面のサポートを強化しています。三井住友銀行では成長が見込まれる産業分野を「クラスター」と呼び、社内に部門横断的組織である「成長産業クラスター室」を組織して取り組みを強化しています。

例えば、農業分野においては大規模な農業法人を中心とした融資のほか、企業の農業参入へのコンサルティングや全国展開をしている川下企業と6次産業化に取り組む農業者とのマッチング等を積極的に推進しています。その他、農業ファンドや再生医療ファンドへの出資、情報通信などで次世代の技術を生み出すベンチャー企業に投資するNECとの共同ファンドの立ち上げなど、ファンドを通じた支援も行っています。


成長機会を求めた海外展開

続いて海外業務においては、中期経営計画で目標としてきた海外収益比率30%を1年前倒しで達成しました。三井住友銀行の海外ビジネスの強みの1つとして、プロジェクトファイナンスがあげられます。先述の成長産業クラスター室では、新興国におけるインフラプロジェクトの構想段階から現地政府とコミュニケーションを取り、各プレイヤーをコンソーシアム化し事業化に結びつけるアドバイザリー業務を行っています。

例えば、インドのデリー・ムンバイ間の産業大動脈構想では資金調達の枠組み構築に係る調査アドバイザイー業務を受託しました。三井住友銀行は、今後10年間アジアでは数兆ドル規模のインフラ需要があると見込んでおり、その成長を取り込もうとしているのです。


『ジャパン・セントリック』から『アジア・セントリック』へ

今後の成長ポテンシャルの高いアジア等の新興国において、三井住友銀行は商業銀行業務への取り組みも強化しています。その内容は、現地に根差して預金を集めて貸出を行うフルラインの商業銀行業務展開を行うという「マルチフランチャイズ戦略」です。例えば、三井住友銀行は、ベトナムの「エグジムバンク」に対して、2008年には15%の出資を行い関連会社化しました。本体から人員を派遣しリスク管理等の支援を行い、現地の日系企業向けの職域取引を展開しています。

また、インドネシアでは「BTPN」に1500億円の資本参加を行っています。ここでは公務員や軍人などの年金取扱銀行として、年金受給者向けのローンと事業性の個人向け貸出を行っており、1000店以上の大店舗網を有して、マスリテールビジネスに強みを発揮する銀行として、年率30~40%の成長を達成しています。こうした出資を通じて、三井住友銀行は日系企業のみではなく現地顧客を含めたアジア発の企業取引や、円滑な商流、情報流をサポートする体制を構築しています。

以上のように、三井住友銀行は「ジャパン・セントリック」から「アジア・セントリック」へと成長し、日本におけるメガバンクからアジアをマザーマーケットとするグローバルバンクとして銀行業務を展開していくことを目指しています。

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photo credit: 三井住友銀行 via wikipedia cc