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先日、米大手金融グループのシティが、日本での個人向け業務について撤退を検討しているというニュースが報道されました。すでに英HSBCホールディングスは日本での個人向け銀行業務から撤退、英スタンダード・チャータードも日本での事業を縮小させており、シティグループはこれらの外資大手に追随する形をとるのではないかと思われます。日本の低金利下における利益圧迫が一番の影響となりました。すでに国内の大手メガバンクなどに日本にある支店を譲渡できないか打診を始めているということです。

もともとシティは、法人業務におけるグローバルな拠点網を生かした決済ビジネスなどを得意としておりますので、今回の一件は、グローバル事業の見直しの一環で採算のあわない国からは撤退するべきだという経営判断が下されたものと思われます。実際に、韓国、トルコやギリシャなどからは撤退しております。今後のシティのグローバル展開を考えた上で、アジアのプライベート・バンキング市場がひとつ着目出来そうです。過去を振り返ると、シティは2004年に日本のプライベート・バンキング事業から撤退をしており、日本人にとって余馴染みのない言葉かもしれません。しかし、シティの主要事業であり、今後の経営戦略上、特にアジアでの展開において重要な位置づけを持っております。本稿では、シティの沿革を振り返り、今後を知る上でもシティの強み・経営戦略についてみていきたいと思います。


顧客預かり資産トップ

2011年のアジア・太平洋地域におけるプライベート・バンキング顧客預かり資産は、米シティグループがスイス最大の銀行UBSを抜きトップとなりました。2011年の資産規模は、複数の金融機関がウェルスマネジメント部門を拡大したものの、1兆0990億ドルと2010年の1兆1050億ドルから減少しました。

また、2012年については、UBSがシティグループを抜き、アジア太平洋地域で最大のプライベートバンクとなりました。2011年にはシティにトップの座を譲りましたが、返り咲きました。プライベートバンカー・インターナショナルによると、 アジア太平洋でウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)業務を行う上位20行を対象に実施した調査結果によれば、UBSのアジア太平洋での運用資産額は昨年、20%増の2150億ドルとなりました。

これに対して、シティは9%増の2100億ドルにとどまりました。プライベートバンカー・インターナショナルが公表したアジア太平洋の2012年プライベートバンク上位20行の番付は次の通りです。

番付

銀行

運用資産額(10億ドル)

2012年

2011年

1

UBS AG

215

179

2

Citigroup Inc.

210

193

3

Credit Suisse Group AG

117

89

4

HSBC Holdings Plc

100-115

129

5

JPMorgan Chase & Co.

60-75

53-68

6

Julius Baer Group Ltd.

60

30

7

Morgan Stanley

58

20

8

Deutsche Bank AG

50

43

9

DBS Group Holdings Ltd.

46

39

10

Bank of Singapore Ltd.

43

32

11

BNP Paribas SA

43

40

12

Standard Chartered Plc

35

35

13

Barclays Plc

30

25

14

Pictet & Cie

20-30

19

15

EFG International AG

16

14

16

ABN Amro Group NV

15

14

17

J. Safra Sarasin Holding AG

15

15

18

Societe Generale SA

15

13

19

Coutts & Co.

14

15

20

United Overseas Bank Ltd.

11-15

11


シティグループの沿革

シティグループ(Citigroup Inc., NYSE)は、金融に関する事業を行う企業を傘下とする持株会社で、本社はアメリカ合衆国のニューヨーク州マンハッタンにあります。シティコープとトラベラーズ・グループの合併により1998年に発足しました。前身は1812年設立のシティバンク・オブ・ニューヨークまで遡り、1890年代までには米国最大の銀行でした。商業銀行が母体ですが、近年では投資銀行化の色彩が強まり、米国や欧州ではM&Aアドバイザリー業務等、投資銀行業務が成長しています。