昨今、少子高齢化の中で事業承継に悩む企業が増えている。一方で、わが国には創業100年以上続く会社が3万社以上存在し、世界でも類を見ない長寿企業の大量輩出国としても知られている。

先の見えない時代の中で、「この先どう生き残っていくか」が企業の課題となっている。今回は、長寿企業のあり方から100年生き残るための事業承継のポイントを探っていこう。

「信用」「伝統」「知名度」は老舗生き残りの原動力

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(写真=Cristian Teichner/Shutterstock.com)

中小企業基盤整備機構の「平成29年度版 事業承継マニュアル」によると、全国の長寿企業4,000社は、老舗企業の強みとして「信用(73.8%)」、「伝統(52.8%)」、「知名度(50.4%)」の3点を挙げている。
例えば、長寿企業の代表としてよく名前が挙がるデパートの松坂屋(現J.フロント リテイリング(株))や三越(現三越伊勢丹ホールディングス)を思い浮かべてみよう。

日常の買い物は量販店やファストファッションショップで済ませるという人でも、何か特別な日の贈り物や季節のあいさつの品などは、このようなデパートに足を運ぶということも多いのではないだろうか。

これは、老舗に対する信頼や知名度をもとに、「この店で取り扱っている品であれば問題ない」という意識がはたらくからだろう。これが、現代でも老舗企業が生き残る原動力となっている。

生き残る企業は努力を惜しまない

しかし、老舗とよばれる長寿企業は、さまざまな歴史の荒波の中を生き抜いてきただけあって、生き残るための努力を怠らない。先の長寿企業を対象にしたアンケートで、「今後生き残っていくために必要だと考えるもの」について聞いたところ、「信頼の維持(65.8%)」に次いで、「進取の気持(45.5%)」と「品質の向上(43.0%)」があがった。

老舗の名声にあぐらをかいて努力を怠った結果、不祥事を起こしてその看板を下ろさざるを得なくなった企業も多い。本当に生き残る企業は、これまでの名声や歴史に満足することなく、時代に合わせて新たな風を取り入れ、さらなる品質の向上を目指すという努力を惜しまないのだ。

日本的な「家」制度と、実子にこだわらない後継者選び

老舗企業の中には、上場して株式公開するなど近代的な企業制度を整備している企業も多いが、その歴史には日本的な「家」制度が息づいてきたことも忘れてはならない。
日本の老舗の多くは、オーナー制度のもとで生き抜いてきた。しかし、他の国のオーナー企業と異なるのは、日本の老舗は必ずしも実子や血縁者が後継者になることにこだわってはこなかったということだ。
後継者の多くは長男ではあるものの、老舗の多くは生まれ順ではなく「誰が商いにもっともふさわしいか」という観点で後継者を選んできた。長男が難しければ次男、三男というケースも珍しくなく、中には従業員の中からこれはと見込んだ者を養子縁組したり、娘の婿に迎えたりして後継者に据えてきた。

その結果、時代が移り変わる中でも適切に企業のかじ取りができる人材が後継者となり、企業の存続を支えてきたのだ。

優れた老舗を支える「番頭」の存在

また、優れた老舗を支えてきた「番頭」の存在を忘れてはならない。

多くの老舗では、番頭と呼ばれる古参社員が、経営者の右腕として働いてきた。昨今の企業組織でも、常務や専務、取締役など、社長やオーナーの右腕となる存在や役職はあるが、経営者とは主従の関係が強い。

一方、古くからの番頭は、時に経営者の方針に従うだけでなく、従業員や顧客とのあいだを取り持ち、時には経営者をいさめることすらあった。優秀な経営者の陰には優秀な番頭の存在がある。会社の将来を考え、広い視野から経営の補佐ができる存在あってこそ、長寿企業は繁栄してきたのだ。

長寿企業に学ぶ事業承継に向けたヒント

長寿企業は、その品位や評判を堅持する一方で、品質向上や時代に合わせた変化を恐れず生き抜いてきた。長寿企業は、「時代の流れにどう対応していくか」「永続する組織の作り方」など、事業承継に向けたさまざまなヒントが隠されている。(提供: 百計オンライン

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