BOPビジネスを進めるための下地作り

成功要因はこれだけではありません。BOPビジネスを進めるにあたり、ユニリーバではインドのユニリーバ従業員に、農村での6週間の共同生活を義務付けています。販売地域の生活の現状を知ることで、販売製品や流通網拡大の戦略に活かしています。また農村部では当時、下痢により年間180万人もの子供が死亡しているという実態がありました。こうした実態を、石鹸・手洗いを普及させることによって回避するという事業を展開することで、政府だけでなく、世界銀行やユニセフなどから金銭的および人的資源の提供を受けています。

企業がいち地域の文化のベースを変えるとなると、莫大な資金や人出が必要となります。こうした部分をうまくカバーすることにより、社会的責任も果たしながら、販売網を拡大していったことも、ユニリーバのBOPビジネス成功につながっていると言えます。

先進国には高いブランディング力で販売

他方、日本をはじめとした先進国では、高いブランディング力で競合他社を引き離す戦略を続けています。日本ではLUXが高い販売力を持つ商品として知られていますが、これはユニリーバによる高いブランドイメージが功を奏した結果だと言えます。実は、イメージ戦略で大きな人気を得た商品が価格競争の結果、数年後には販売終了を余儀なくされた過去を持つユニリーバ。この教訓を活かし、価格戦略ではなく広告費をかけブランドイメージを向上させることにより、価格を下げずとも販売数を減らさない販売方法を実践しています。

前述のLUXの場合、購入者層の高齢化に伴い、2013年にはCMやパッケージなどブランド戦略を若年層向けに一新。ただ一新するだけでは消費者がついてこないことを理解していたユニリーバは、有料のサンプリング販売により、ブランドイメージを落とさずに若年層へと販売網を広げることに成功しています。先進国に対するこうしたブランディング戦略の成果は、減収増益の2013年の業績からも見て取れるのではないでしょうか。価格戦略に頼るのではなく、ブランディングにより販売数と利益を確保するという理想的な経営方法を実践できていることも、ユニリーバの成長の秘訣といえるのではないでしょうか。

今後の株価の行方は

地域に応じた販売戦略を実施しているユニリーバ。とはいえ2013年10月には、新興国に対する業績悪化の見通しにより、株価が11ヵ月ぶりの安値を記録したことは、投資家の間では記憶に新しいのではないでしょうか。なんとか減収増益に収まった2013年ですが、今後の株価の行方は、新興国への戦略にかかっていると言っても過言ではないかもしれません。今後のユニリーバの新興国に対する動きに、経営戦略面でも株価面でも注目しておきたいところです。

photo credit: ユニリーバ via wikipedia cc