ストラタシスの買収戦略
最大手3Dシステムズに迫る業界2位のストラタシスの株価は2014年の9月現在100ドルを突破しています。このような急成長の背景には、ストラタシスの積極的な買収戦略があります。ストラタシスは2012年12月にイスラエルのオブジェットと合併し、6月には低価格デスクトッププリンター大手のメイカーボットの買収も行いました。
オブジェットとの合併で出来た新会社、Stratasys Ltd.の企業価値はおよそ30億ドル(Stratasysが16億3000万ドル、オブジェットが10億4000万ドル)の規模です。合併によって研究開発により多くの資本を投入できるようになり、小さな企業ではアプローチが難しい分野にも乗り出せるとStratasys Ltd.のデヴィッド・レイスCEOは語っています。
またデスクトップ分野でリードしていたメイカーボットの買収金額は、約600億円にものぼりました。メイカーボットの買収によって、個人向けデスクトップ市場で先駆けていたスリーディー・システムズの3Dプリンター「Cube」シリーズに対抗できるようになりました。価格帯の抑えられたメイカーボットの製品は、3Dプリンティングの普及を加速できると同社は期待しています。メイカーボットの買収によって、ストラタシスはメタル素材以外の分野では3Dプリンター界のリーディングカンパニーのポジションを確立したとストラタシスのライスCEOはみています。
業界最大手スリーディー・システムズ
業界最大手のスリーディー・システムズもまた、2009年以来20以上の小さな買収を繰り返し3Dプリンター市場の統合を目指してきました。同社は廉価版製品の「Cube」シリーズを展開してきました。プリンター本体の価格をなるべく抑え、材料で利幅を取ろうという戦略で「Cube」を普及させています。スリーディー・システムズは業界最大手として順調に成長し、時価総額は2013年に36億ドルから80億ドルへ急拡大しました。
同社は投資家とアナリストを対象にプレゼンテーションを行うInvestor & Analyst Dayで2014年度下半期の戦略を次のように掲げています。
- 材料、医療、金属の分野でのローバル展開に焦点をあてた買収と拡張
- 新技術を用いた製品の開発とリリース
- 医療業界での地位の拡張
スリーディー・システムズは30%の有機的成長によって、2015年の売上高を10億ドルと予想し、総利益は55~60%と掲げています。
懸念される3Dプリンターバブル崩壊
躍進を続けるかにみえた3Dプリンター業界ですが、スリーディー・システムズ、ストラタシス共に今年前半は株価の落ち込みが顕著でした。4月時点でスリーディー・システムズの株価が40%低下、ストラタシスの株価も19%低下と大幅に下落しています。特にスリーディー・システムズは今年2月に収益が1株あたり83~87セントと発表し、1株あたり93セント~1ドル3セントというアナリスト達の予想を下回ったことが響きました。2013年に80億ドルあった時価総額も、2014年9月現在58.8億ドルとなっています。3Dプリンター業界は、2013年までの過剰期待の反動で、バブル崩壊も懸念されています。
3年で急成長してきた3Dプリンター業界は、まだまだこれから可能性を秘めている分野ともいえるので、バブル崩壊を宣言してしまうのは早計でしょう。期待が過剰に先行しているとはいえ、最大の強みである柔軟性と簡易性は製造業に革新となり得ます。切断、プレス、研磨、鋳造といった従来の金属加工技術に取って代わるには、さらなる性能の改良とコストダウンが課題となりますが、3Dプリンター業界には今後も注目していきたいところです。
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Hadrien Sayf
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