USBが進めている中央銀行の担保付き仮想通貨「ユーティリティー・セトルメント・コイン(USC)」の開発プロジェクトに、バークレイズやHSBC、クレディスイス、MUFGなど、国際大手銀行6社が新たに加わった。
2018年の発行予定に向け、最終実験段階に入ると同時に、中央銀行や規制当局との協議も順調に進行中だ。中央銀行が独自の仮想通貨を利用する未来まで、あと一歩というところだろうか。
ブロックチェーン上の担保付資産を利用し、取引の多様化と改善を目指す
このプロジェクトは2015年にUSBが、スイスのブロックチェーン・スタートアップ、クリアマティクスと発足させたものだ 。ドイツ銀行やサンタンデール、バンク・オブ・ニューヨークを含む大手銀行を参加メンバーに迎え、段階的に実験を進めてきた。
コインデスクの報じたところでは 、「特別仕様のブロックチェーン上の担保付資産を利用し、世界中の銀行がより容易に多様な取引を行えるようにする」のが本来の目的で、それによって「中央銀行による仮想通貨の準備を支援する」ことが、プロジェクトのコンセプトである。
実験の第3段階では、メンバー間のリアルタイムなエンド・ツー・エンド取引を擬態する意図で、「所有権の正式な移転」および「移転の正確な現金同等物(容易に換金可能できる、価格変動に受ける影響が少ない短期投資商品)の定義」のテストが実施された。
所有者に直接発行される担保付トークンで、資産売買を簡潔化
そして新たにバークレイズを筆頭とする新メンバーを加え、実験の最終段階に入ると報じられている。
UBS戦略投資・FinTechイノベーション部門のディレクター、ハイデラ・ジェフリー氏曰く、通常、単体の「信用貨幣(政府の信用で流通する不換紙幣)」 の取引は、仲介業者による複雑なネットワークを通してブロックチェーン上で行われる。
しかし今回の移転テストでは担保付トークンを使用することで、資産の売買の簡潔化に挑戦する。この担保付トークンは従来の情報交換ネットワークを経由せず、資産所有者に直接与えられることになる。
HSBCのFinTechパートナーシップおよび戦略部門責任者、カウシャルヤ・ソマスダラマ氏は、USCが「中央銀行の現金資産で保証された担保付仮想通貨になる」とし、「所有権の移転を簡潔化し、プロセスの複雑さの軽減と時間の短縮を可能にする」と期待を寄せている。
興味深いのは、各取引通貨にUSCが発行される点だろうか。ブルームバーグが報じたUBSのメモ によると、「各USCは国内通貨と対になり、各国の中央銀行で保有されている現金で100%担保が裏付けされている」そうだ。
仮想通貨のハッキング事件などが世間を騒がせているが、こうした非常事態が起きた場合でも、USCならば中央銀行の裏付けがあるので安心だ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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