社宅制度は、従業員が相場より低い家賃で家を借りることができるため、喜ばれる福利厚生の1つです。しかし、社宅の家賃を設定する際、極端に低い金額や無償の場合は、家賃が従業員の課税対象となってしまったり、企業が支払う消費税の控除にも大きく影響したりする可能性があります。
今回は、社宅にかかる税金の「課税・非課税」のボーダーラインについて解説します。
賃貸料相当額を計算する
会社が社宅を借りている場合、賃貸料相当額の50%以上の家賃を支払っていれば家賃は非課税、支払っていなければ課税対象となります。一般的な従業員の賃貸料相当額は以下の式の合計金額で表されます。
1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
ただし、いわゆる豪華社宅を会社役員に貸与している場合には、賃貸料相当額は一般的な社宅より高く設定されます。自社所有の社宅の場合は以下の式の合計金額の1/12で表され、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じることとなっています。
1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12% or 10%
2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
また、会社が社宅用に借り受けた住宅を役員へ貸与している場合には、会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、自社所有として算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額となります。
計算例
例えば、賃料12万円、床面積54平方メートル、固定資産標準額が土地100万円、建物300万円の社宅では、賃貸料相当額は以下の計算で表されます。(小数点以下切り捨て)
300万 × 0.2% + 12 × 54 / 3.3 + 100万 × 0.22%
= 6,000 + 196 + 2,200
= 8,396円
会社が従業員に対して無償で貸与する場合には、8,396円が給与として課税対象になります。賃貸料相当額の50%が課税・非課税のボーダーラインとなるため、従業員から毎月4,198円以上を家賃として受け取っていれば、非課税ということになります。
上の例からも分かる通り、賃貸料相当額は実際の賃料と比べると割安となるケースがほとんどです。社宅賃料の設定にもよりますが、上の例では実質の負担が4,198円で家賃12万円の住宅に住むことができるため、非常に大きな福利厚生制度と言えるでしょう。
また、企業によっては、12万円の住宅を社宅として他の人から借り受け、2万円で従業員に貸し付けるというような方法をとる場合もあります。その場合、従業員の給与によって計算される社会保障費を上昇させることなく、従業員の実質の給与は10万円増加したことになるため、非常に効果的な節税方法と言えます。
社宅の仕入税額控除
事業活動に課税される消費税は、課税売上げにかかる消費税額から、課税仕入れ等にかかる消費税額を差し引いて計算されます。その際、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」どちらかの計算方法を選択することになりますが、「個別対応方式」を用いる場合には、課税仕入れにかかる消費税額を以下の3つに区分する必要があります。
・
課税売上げにのみ対応するもの
・
非課税売上げにのみ対応するもの
・
課税売上げと非課税売上げに共通して対応するもの
仕入税額控除が多くなるほど法人税は安く抑えられますが、社宅に関する仕入税額控除の区分は以下のように定められています。
1. 自社所有の社宅や従業員寮の取得費に関して
従業員に有償で貸し付けている場合には、その他の資産の譲渡等にのみ要するものに該当します。また、無償で貸し付けている場合には、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当します。
2. 他の者から借り上げている社宅や従業員寮の借上料に関して
従業員に転貸するために借り受ける場合の家賃は課税仕入れには該当せず、仕入税額控除の対象になりません。
3. 社宅や従業員寮の維持費に関して
修繕費用や備品の購入費用等は課税仕入れとなります。その際、仕入控除税額は自社所有の社宅や従業員寮の取得費と同様の取り扱いとなります。ただし、管理人の給与は課税仕入れには該当しないため、仕入税額控除の対象になりません。
社宅と税金の関係を理解しよう
社宅をうまく活用することで、従業員にとっても企業にとっても大きなメリットがあることがわかります。ただし、自社所有か他者から借り上げたものかによって企業が支払う消費税の計算が変わることを知っておかなければなりません。
借り上げではなく、自社所有の社宅を用意しておくことで、仕入税額控除に組み込むことが可能となり、節税に繋がりやすくなります。
(提供: フクリ! )
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