大胆な円形のアップル新社屋内に設けられた1000人収容の「スティーブ・ジョブズ劇場」で行われる新世代のiPhone発表会がいよいよ、9月12日(火)に迫ってきた。
今のところiPhone 8ともiPhone EditionともiPhone Xとも呼ばれるこの新機種は、ホームボタン廃止、顔認証ログイン、デュアルカメラレンズ、ベゼルなしのスクリーン、精細な有機ELディスプレイ採用、今までにないガラス製のボディー、ワイヤレス充電など、iPhone発売10周年記念にふさわしい機能を備えた、完成度の高いものになると予想されている。
米国ではそれなりの期待感が漂う一方、以前の機種と比べても盛り上がりはイマイチで、「ストレージが最小のモデルでも、価格がiPhone 7より300ドルも高く、1000ドルを超える」との否定的なうわさがソーシャルメディアで拡散される始末だ。
翻って、「オマハの賢人」ことウォーレン・バフェット氏をはじめ、多くの投資家たちはiPhone 8が売れると見込み、アップルの株価は極めて順調に上げている。消費者目線と投資家目線は一見、食い違っているのだが、どちらが正しいのか。追ってみた。
ワクワク感を失ったiPhone
米投資銀パイパー・ジャフリーのアナリスト、マイケル・オルソン氏は9月5日付の投資家向け分析で、400人の米国内iPhoneユーザーから回答を得たアンケート調査をもとに、「昨年9月に発表されたiPhone 7から今年のモデルであるiPhone 8へアップグレードすると回答したのは16%に過ぎず、24%が『するかも』としており、消費者がワクワクしていないことが見て取れる」と指摘。
翻って、カナダの金融大手RBCキャピタルマーケッツが1138人の米国内iPhoneユーザーに対して行った調査では、iPhone 8の大きな「ウリ」であるベゼルなしスクリーンが最も魅力的な特徴だとした回答者は全体の6%に過ぎなかった。これに対し、35%が「ワイヤレス充電が最も魅力的だ」と答え、消費者とアップルの開発陣の求めるもののベクトルが乖離を始めている印象さえ受ける。
さらに、機種変更に800ドル以上を費やすと答えたのは、全体の22%しかおらず、ここでも「価格」がネックになっていることがわかる。
世界のスマートフォン市場が飽和状態にあるなか、製品レビューサイトやソーシャルメディアには、「過剰な機能は要らない」「誰がスマホごときに1000ドルも1200ドルも払うか」などの声があふれている。
米『フォーチュン』誌のテクノロジー評論コラムニスト、アダム・ラシンスキー氏は、「1000ドル以上だって?アップルは、行き過ぎだ。いろいろ機能があるらしいが、そんなものに(最大ストレージ容量で)1200ドルの価値はない!もう、アップルの栄光の日々は終わったんだ。それより、お願いだから、現世代のiPhoneで問題のバッテリーの持ちをもっとよくしてくれ」と語っている。
また、顔認証ログインについても、「今までのスマホの顔認証は完成度が低く、写真でログインできるものもあった。本当に大丈夫か」という懸念と、「アップルは完璧主義だから、期待できる」との楽観論が交差している。