「あなたの家が半額になる」という、なんとも目を引く文字が帯に書かれた榊淳司氏の新刊『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)。この刺激的なタイトルをつけた著者が語る2025年の東京の不動産の未来とは?暴落を回避する道はあるのだろうか。(取材・編集・構成:中村麻衣子)

gazou1
(写真=ZUU online編集部)

プロフィール
榊 淳司(さかき・あつし)
同志社大学法学部および慶應義塾大学文学部卒業。1980年代後半からマンションの広告制作や販売戦略立案などを手がける。現在は、一般ユーザーを対象にした住宅購入セミナーを開催するほか、新聞や雑誌などに多くの記事を執筆する。

需要と供給の不自然さから生まれるのがバブル

——タイトルにある「2025年」や「大暴落」という刺激的な文字に目がいってしまいますが、今回この著書を書こうと思ったきっかけはあるのでしょうか。

リーマンショック前の2005年あたりから首都圏の不動産市場ではいわゆる不動産ミニバブル(=ファンドバブル)が発生していましたが、あの当時の私は「こんなに高くなったら売れないだろう」と不思議に思っていました。その後、2008年のリーマンショク後の大不況で、マンションデベロッパーが次々に倒産するのを目の当たりにしました。さらにその20年前にはあの巨大な平成バブルの形成と崩壊も不動産業界の近辺で体験しました。あの時もマンションにはまさかという価格が付き、その後はえげつないほどのバブル崩壊へとつながっていったのです。

2回のバブル崩壊は、よく似ているようで微妙に違いました。今回のバブルは前の2つに比べて規模は小さいものの、どう考えても一般のサラリーマンが買えないところまでマンションの価格が上がってしまっているところは同じ。上がった理由は、みんなが買いたいからという需要が強いからではではありません。前の2回のバブルもそうですが、他の不自然な理由が厳然と存在したから上がっているのです。この本では特に今回のバブルにおけるその不自然な価格高騰の中身と、必ず下がるという明解な理由を書いて見たいと思いました。

実は「2025年」というのは、編集者の方がつけたタイトルなのです。そこで、暴落するまでのスケジュールを順を追って書いていったら、かなり説得力のある内容になりました。結局、書名を素直に受け取ると大暴落するのは2025年にはなりましたが、本当は今年中に始まってもおかしくはないのです。その理由は本書を読んでいただければお分かりいただけると思います。

——2025年の暴落までのスケジュールにある、「2022年にある生産緑地法の期限が切れ」について教えてください。

市街化区域にある農地は、ビルや賃貸住宅と比べると生産性が悪いので、固定資産税が高ければ経営を圧迫しますよね。そこで所有者がその土地で農業を続けることを条件に30年間は例外的に農地としての軽い課税を続けることを認めようというのが「生産緑地法」なのです。ところが、2022年にこの30年の期限が切れます。30年前は生産緑地にしておきたかった所有者たちですが、今はもう農業を続けることが困難な高齢者になっています。さらにその高齢者から引き継いで農業を続けられる方も少ないでしょうから、農業を行う「生産緑地」として持っておくよりも売却したいとなるでしょう。そうすると、「生産緑地」のある都市部の土地が短期間に売り出されて大量に市場に出てくるという観測が成り立ちます。

ただ2022年に集中して売却されてというのは考えにくいでしょうね。現状は何らかの延長措置などを国などが検討しているようです。しかし2022年以降は徐々にマンションなどに化けて市街化されていくというのはあるでしょう。生産緑地は世田谷区とか練馬区に多く、大阪などにもありますがほとんど東京23区なので、主に東京限定のバブル崩壊圧力といえます。

他にも著書では、2017年から2025年までの毎年、暴落へのスケジュールを書いているので、ぜひ読んでみてください。

2025年東京不動産大暴落
『2025年東京不動産大暴落』(クリックするとAmazonに飛びます)

——著書でも触れられていますが、「局地バブル」というのは、どのエリアから地価が上がっていくもしくは下がっていくというのはあるのでしょうか。

首都圏の地価というのは「の」の字で上がっていくという法則性があるんです。東京の港区から始まって、渋谷、品川、目黒、神奈川の川崎、横浜、その後上がって港北ニュータウン、埼玉に行き、最後に千葉。具体的には港区の赤坂あたりから始まって、首都圏を「の」時にまわって最後に千葉市でおしまい、という流れです。過去の2回のバブルもそうだったんですね。ちなみに下がっていく時は、逆「の」の字なので、千葉から始まって最後に赤坂あたりまでくると、下落は止まりました。

今回の局地バブルは少々違います。港区から緩やかに西南に向かって川崎市の武蔵小杉あたりを席巻した後、横浜のみなとみらい辺りまで行って止まっています。その後は山手線の内側から外側へ向かってじわっと広がりかけました。江東区などはかなり実力値とかい離してきましたね。このようにもともと持っているポテンシャル以上に価格が上がってしまったエリアから価格は下がっていくはずです。なので、江東区とか世田谷区は下がりやすいと思いますし、現にこの2つのエリアでは現在、新築マンションの値引きが始まっています。そして最後は真ん中。今回のバブルは、その動きはひらがなの「の」ではなくカタカナの「ノ」になってしまった感じですね。

——「局地バブル」が起きている今はマンション買うタイミングではないのでしょうか?

将来の値上がりを期待するのなら、今は買うタイミングではないでしょう。住まいに関してどう考えるのかにもよりますが、都心に住みたいのであれば、今は賃貸にしておいて購入はもう少し待ったほうがいいですね。ただ、子供を落ち着いた環境で育てたいが、あまり住居費かけたくないといのであれば、郊外の安いマンションを買えばいいのです。

今後景気が悪化する場面では、無理なローンを組んだ人たちが返済しきれなくなって、競売や任意売却によって多くの物件が市場に出てくるのではないでしょうか。そうなれば、中古市場では本格的な値下がりが始まります。

一方、不動産投資という視点で見ても、そろそろ限界です。今、都心で不動産投資をしている人たちに聞くと、利回りが5%を下回り最近では4.8%〜4.9%なのでもう限界です。投資向けの融資金利は1.5%から2%程度が一般的。だから経費などの諸費用を全部さしひいた場合の利回りが5%以上にならないとキャッシュフローがプラスになりません。つまりは、今より利回りが下がる(物件価格が上がる)と、投資家さんたちは買えなくなるのです。だから、今が限界。これから不動産投資に参入したい人たちの中にはそれでも買おうという人もいるようですが……。今は難しい市場と言えるでしょう。