労働基準法では労働者の権利を守るために労働時間などが定められています。管理職は適用除外と考える向きもありますが、はたして、それは正しいのでしょうか。

経営者が仕組みを正しく把握していない場合、管理職の労働時間の超過や賃金が正しく支払われないということになりかねません。経営者と管理職、どちらもこの機会に正しい法律の知識を学び、トラブルを未然に防ぎましょう。

管理職とは

(写真=Jirsak/Shutterstock.com)
(写真=Jirsak/Shutterstock.com)

管理職とは、職場において労働者の指揮や組織の運営に携わる立場の役職です。民間企業や公務員では課長より上の立場が管理職に該当する可能性があり、教育職では校長または教頭が当てはまることになります。

労働基準法では「管理監督者」として定義されており、一般的な労働者とは立場が異なります。労働基準法第41条によれば、主に以下の項目は労働者には適用されますが、管理監督者には適用されないことになっています。

・ 休憩時間を除き、一週間に40時間または一日に8時間を超えて、労働させてはならない(第32条)
・ 一日6時間を超える労働には45分、8時間を超える労働には1時間の休憩を与えなければならない(第34条)
・ 少なくとも毎週一回の休日を与えなければならない(第35条)
・ 労働基準法に規定された以上の労働には割増賃金を支払わなければならない(第37条)

管理監督者が適用から除外される理由としては、管理監督者は時間管理にある程度の裁量権が与えられていることから労働基準法で保護する必要性が少ないと考えられているためです。

また、割増賃金の場合、残業手当や休日出勤手当を管理監督者に支払う必要はありませんが、深夜残業手当は支払う必要があります。

管理職にも有給がある

労働基準法には、管理監督者に適用されない条項もありますが、有給については労働者と同じく適用されます。有給休暇については労働基準法第39条に、違反した場合は第119条に定められています。

・ 雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、そのうちの8割以上出勤した労働者に対して、勤続年数に応じて規定の有給休暇を与えなければならない(第39条)
・ 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する(第119条)

すべての会社は管理職に有給休暇を与えなければなりません。しかし、労働者は法律の規定をきちんと把握している方ばかりではありません。知識の無さにつけ込んで管理職に有給を与えていないケースも多々あります。また、本人から言い出さなければ有給を与えようとしない会社も少なくないため、納得がいかなければしっかり主張していく必要があります。

管理職でも管理監督者とは限らない!

一般的には、課長より上の役職が管理職と呼ばれていますが、なかには労働管理者としての実体をともなっていないケースも存在します。政府の見解によると、管理監督者として認められる要件は以下となります。

・ 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任と権限を有していること
・ 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
・ 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

たとえば、課長になったから必ず管理監督者というわけではなく、形や名ばかりの管理職は一般的な労働者と待遇は変わらないということになります。働き方の実態で判断し、残業代の未払いや有給休暇に関するトラブルを未然に防ぐ必要があります。

労働基準法をきちんと把握しておこう

管理職は一般的な労働者とは立場が少し異なります。労働時間・休息・休日・残業手当・有給休暇など、適用される条文をしっかりと確認しておきましょう。

特に有給休暇に関しては、管理監督者であってもしっかりと取得し健康被害などに気を付ける必要があります。また、たとえ会社内で管理職と位置づけられていても法的には一般的な労働者と判断される場合もあります。この点も把握しておきましょう。

(提供: あしたの人事online

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