人口減少と高齢化が同時にすすむ日本では、少しずつ生活スタイルや仕事のやり方が変化してきています。

人口増加の時代には、郊外に人口が流出し、そこに住宅や生活のコミュニティが集約され、ドーナツ化現象と呼ばれていました。都心から電車で一時間以上離れたエリアに戸建て住宅を持つことがサラリーマンのステイタスだった時代です。しかし、人口減少と転じた今、当時とは逆の現象が起きているようです。郊外では空室の物件も目立ち始め、オーナーのキャッシュフローにも影響が出てきています。以前とは逆に、都心に住む単身者や高齢者が増えているのです。

人口減少の余波は不動産投資にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。そして、投資家は今後どのような手法をとるべきなのでしょうか。

高齢化と人口減少によって郊外の住宅需要は減っている

Apartments
(写真=Grand Warszawski/Shutterstock.com)

日本各地で人口は減少への一途をたどっています。ただ、東京都心部だけは人口が増え続けているようです。

2017年4月5日の『日本経済新聞』の記事では「多摩地域や23区東部の自治体を中心に減少に転じていくが、都心3区は増加傾向が続く。」とあります。2040年までは郊外の人口は減り、都心部では人口が増え続けると言われているのです。この原因は、高齢化や少子化が考えられます。

ドーナツ化現象の世代では、都心から電車で1〜2時間行ったところに2階建ての戸建てを建てることが多く、家族構成としては4〜5人くらいが一般的でした。現在では、高齢化や人口減少によって家族の人数が減っている家族も多いため、戸建てである必要はありません。

高齢者が1人や2人で暮らしている家庭も多くなってきており、郊外で大きな家に住むより、都心でマンションに住んだ方が利便性も良いでしょう。独身者にとっても郊外から長時間かけて会社に通うより、仕事帰りに習い事や食事などに気軽に行ける会社の近くが暮らしやすいといえます。

医療機関、交通機関、商業施設等がそろう都市部が選ばれる

高度成長期に多く建てられた戸建ては2階建てが多く、主には4〜5人の家族を想定して建てられています。そのため子どもが小さいうちはいいですが、成人して家を出て行くと、残された夫婦にとっては広すぎるという問題が生じます。戸建てでは勝手口や2階の窓など施錠箇所が多いので、セキュリティに不安を感じている人も多いでしょう。一方、都心の1LDKマンションなどであればセキュリティも万全ですし、1〜2人であれば快適に暮らすことができます。また、戸建ては庭の手入れや建物のちょっとした補修を自分でしなくてはならないため、それらの作業は高齢になるほど難しくなってきます。

また、郊外ではクルマを使わないと移動できない地域も多く、クルマの運転ができない人や苦手な人にとっては大変不便です。その点、都心部は電車やバスでほぼどこにでも行けるよう交通網が張り巡らされているので、移動するだけであればクルマは不要といっていいでしょう。

交通機関の発達に伴って、都心は医療機関や福祉施設を利用する人にとって住みやすい環境となっているだけでなく、ほとんどの交通機関でシルバーシートが設けられていたり、バリアフリー対策がとられていたりと大変便利になっています。年々都心に住む高齢者は多くなっているのは、これらが理由にあるのではないでしょうか。

このような変化が顕著に出ているのは、高齢者だけではありません。若い人の生活や仕事の環境にも変化が見られます。今の若い人は郊外の戸建てより、都心の少し上のランクの部屋を好む傾向にあります。長時間かけて郊外から通勤するより、多少家賃が高くても会社から近い方が、効率的に仕事ができると考えている人が多いようです。

郊外の戸建てに住むメリットは、家の中を広く使える、自宅に庭がある、近くに大きな公園があるなど、余暇を落ち着いた環境でゆっくり過ごせることでしょう。戸建てに住むということは、仕事とプライベートの空間をはっきり分けることで、生活にメリハリをつけようとしたのかもしれません。

今の若年層は、なるべく通勤に時間と体力を使わないことを望んでいます。仕事の帰りにジムや食事に行く、スーパーやコンビニが近いなど、快適に生活ができることを望むようになりました。休暇に自宅でのんびり過ごすことより、通勤時間が短いことで手に入れられる時間を楽しむようになったのです。

結婚をしても1人あるいは2人くらい子どもがいればいいという人が多く、その位の人数であれば、郊外に大きな家を持つメリットがないと考えているのかもしれません。子どもを入れて3人なら、子どもがある程度の年齢になるまで1LDKくらいあれば十分に生活できます。

このように高齢化や人口減少は、さまざまな年齢層の生活や住処に大きな変化を及ぼしています。