最近、残業に対して厳しく管理する会社が増えていますが、しかし「残業するな!」といわれても、仕事が終わらない人は結構多いはずです。ただ一方で、残業ゼロで結果を出す人もいます。残業しても結果が出ない人と、残業しなくても結果が出る人、その間にはどのような「差」があるのでしょうか。ヒントは「段取り力」にありました。

(本記事は、伊庭 正康氏の著書『 会社では教えてもらえない 残業ゼロの人の段取りのキホン 』すばる舎(2017年7月11日)の中から一部を抜粋・編集しています)

作業スピードが速い? 使う道具が違う?

会社,段取り,残業
(画像=Webサイトより)

職場にスーパーマンのような人っていませんか?尋常じゃない業務量を抱え、さらにプラスアルファの仕事が降りかかってきても動じず、その上、自らがそれ以外の仕事を創り出す、そんな人。どんな魔法があるのかと思ってしまいます。でも、よく観察すると、すぐにわかることがあるのです。

多忙でも余裕を見せるそんな人たちに共通しているのは、ただ1つ。「段取り」が良い、ということ。

でも、思いません? そもそも、「段取り」って、どういうことって。辞書を見ると、実にわかりやすく書かれています。段取りとは、「事を運ぶための順序。事がうまく運ぶように、前もって手順をととのえること」(大辞林)なのだと。なるほど、段取りが良いというのは、決して手帳にキレイな付箋を使ったり、便利なアプリを探すことではないことがわかります。ましてや、ひたすら業務のスピードを速くすることでもなさそうです。つまり、段取りとは、「先を読んだ行動ができる」ことを指すのです。

では、段取りの良い人と段取りの悪い人を比較してみましょう。会社の忘年会を企画する幹事に任命されたシーン。段取りの悪い人は、すぐに動いているので、速いといえば速いのですが、結果はイマイチです。

次に、段取りの良い人を見てみるとどうでしょう。最初の一歩から違います。どんな状況でも、彼らが動く時の第一歩は、「何を目的とおくか」です。この忘年会は、目標の達成を労うためなのか、みんなでバカ騒ぎをするためなのか、それとも会話を重視するのか。

ここをハズすと、「やり直し」になることを彼らは知っているのです。だから、彼らは上司に「狙い」を確認するわけです。もし、「たくさんの人と会話をする」ことが上司の「狙い」だとしたら、立食形式のほうが良いかもしれないし、中華の円卓かもしれない。少なくとも席が固定されるコース料理ではないことはわかります。

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段取り

(画像=本誌より (C)村山宇希)

「先を読んだ行動」ができるかどうか

そして、次のステップです。彼らは、どんな時でも、「複数の選択肢」を挙げた上で、「最適な案」を選びます。上司からの「他になかったの?」「本当にそれがベスト?」の疑問にも対応できるのは、このためです。

実際に、彼らが上司に提案する時は、こんな感じです。「交流を図ることを優先し、立食形式で考えてみました。実は、3つの案を考えました。1つ目は円卓を囲む中華、2つ目は居酒屋、3つ目はこの立食です。立食だと席に固定されず、日ごろ交流のない人との偶然の出会いもアレンジしやすいと考えました。いかが思われますか?」と。

こう提案されると上司も納得です。もう、わかりましたよね。段取りの良い人というのは、速いスピードで手際良く作業を処理する人ではありません。段取りが良いとは、このように、目的を考え、確実な達成に導くため、「先読み」をした手順を踏むことを指すのです。

「ここが空いている」とわかるとラクになる

わざわざスケジュールを立てなくても、今までは何とかやってこられたけれど、気が付けば残業が多くなってしまったり、さらには相手を待たせてしまっている……。そんなことが増えてきていませんか。忙しい日常においても、時間に振り回されない人になるためには、逆に「先々のスケジュールを決める」ことです。

でも、わざわざ計画を立てるなんて面倒くさい。今まで通り、なんとかなるだろうと思っている人もいるかもしれません。この気持ち、わかります。白状しますと、私も新人の頃は、全く予定を決めませんでした。自分を忙しくするのが嫌だったからです。

でも、気付いたのです。先々までしっかりと予定を組まないから、時間に忙殺され、その結果として有給休暇も消化できず、相手を待たせてしまっていたのだ、と。自分の自由を確保するためには、絶対に先々の予定まで決めることです。

たとえば「ここで有休をとって旅行に行こう」「ここはコンサート」など、数カ月先まで予定を決めてしまえば、それが自由を確保することと直結しますし、時間に追われることはなくなります。

このように、段取りの良い人は、忙しいからこそ、先々の予定を決めることで、自分の時間を確保しているのです。早めに予定を決めて、前もって伝えておけば、周りの人にも迷惑はかかりません。逆に、「今は忙しいから休める状態になったら考えよう……」と思っていたりすると、結局いつまでたっても旅行に行けないという状況になってしまいます。

「入ってきた順番」と優先順位はイコールではない

最終局面になってから、バタバタすることはないですか。それって、実は「目の前のタスクにすぐに飛びついてしまう」ことが原因かもしれません。段取り上手な人は、すぐに飛びつきません。あえて、ひと呼吸します。

なぜだと思いますか?「業務があふれる」ことを危惧しているからです。後先を考えずに飛びつくと、必ず「タスク」があふれ出します。彼らはここをしっかりとイメージしているのです。もし着手しそうになったら、彼らのようにひと呼吸してみてください。そして、着手する前に、それをやることで時間オーバーにならないかをじっくりと考えてほしいのです。もし、時間がオーバーするようなら、潔くスパッと後回しにするわけです。

ついでに、もう1つ。1日の予定を立てずに、いきなりパソコンを立ち上げ、書類を作成することも避けたいところ。この場合も、必ず業務があふれるからです。まず、今日は何をする日なのか、何時間かかるのかを確認した上で、順序をつけてから作業に入りましょう。さらに、こう言い聞かせてみるのも良いかもしれません。

「今の自分はそれで良いかもしれないけど、5時間後の自分に迷惑をかけるかも」と。
先の自分をイメージすると、より着手に慎重になれるでしょう。

伊庭正康
1991年リクルートグループ入社。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。その後は、プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回、累計40回以上の社内表彰を受けた。営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社(株)らしさラボを設立

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